PALETTE Percussion Quartet 《打楽器四重奏の世界 Vol.2》

“No Music, No Life”とはタワーレコードのキャッチコピーである。
「音楽のない人生なんて」というほどの意味だろうが、よくよく考えると人生に音楽があるのではなく、そもそも(音を楽しむという意味で)音楽の中に人生があるのだということを教えられる、コペルニクス的転回の発想に溢れるコンサートだったように僕には映った。

人生は道そのものであるのと同様に、人生とは音楽そのものなのである。
ジョン・ケージの”Living Room Music”に象徴される、すべてが音楽の素材であることを提示してくれたあのステージに触発され、そのことに僕は気づかされた。何気ない日常に本から音楽は溢れているのだということを僕たちは今一度知らねばならないだろう。

とても20歳やそこらの学生たちが創出した舞台だとは思えない抜群の構成力と、何より個々の技術力はもちろんのこと、4人が繰り出すアンサンブルの見事さ。お世辞抜きで素晴らしかったと拍手喝采を送りたい。

それにしてもパーカッションの持つ根源的エネルギーに僕は度肝を抜かれた。
静謐な、天から降り注ぐような響きもあれば、あるいは大地を揺るがすほどの力に漲る鋭い響きもあった。打楽器はおそらく人間が生み出した、人間の持つパルスに同期する最良のツールだろう。僕たちは、生きとし生けるものは、すべて律動の中にあり、その律動こそが音楽のパワーの源泉なのだということを教えてもらったような舞台。とても感動した。

PALETTE Percussion Quartet 《打楽器四重奏の世界 Vol.2》
2023年3月20日(月)19時開演
府中の森芸術劇場ウィーンホール
Bell 1 Opening
・ジョヴァンニ・ソッリマ:Millennium Bugより第1楽章
・アンディ・アキホ:Pillar IV
第1章 癒しの音空間
・フィリップ・グラス:Madeira River
・チャド・フロイド:Triptych Boom
・ルディガー・パヴァッサー:Yeh Gangga
休憩(15分)
第2章 新しい打楽器四重奏のカタチ
◇打楽器×美術
・ジョン・ケージ:Living Room Musicより
1.To Begin
3.Melody
4.End
◇打楽器×ピアノ
・ジェラルド・フィンジ(宮垣輝希編曲):Eclogue
◇打楽器四重奏×日本舞踊
・冷水乃栄流:Trans-Trans(世界初演)
PALETTE Percussion Quartet
宮垣輝希、菊池幸太郎、但馬馨、村瀬芽生
冷水乃栄流(作曲)
花柳貴伊那(日本舞踊)
山縣美季(ピアノ)
美術演出
大森舜真、永島七海、京谷理生、松井康平

現役の東京藝術大生による渾身のステージは、昨年に引き続き2回目だそう。
例えば、開演を知らせるベルもオリジナルのものを書き下ろしており(宮垣輝希&但馬馨)、バックステージから生で演奏しているというのだから粋。
個人的には、第1章においては冒頭のグラスの”Madeira River”に惹かれた。これはまるで音による天地創成のドラマであり、森羅万象、万物の閃きたる「般若心経」の如く、「不生不滅不垢不浄」と唸る(ように僕には聴こえた)打楽器の心地良い響きに感心した。そしてまた、マリンバ四重奏なる”Yeh Gangga”の単色ながら色彩豊かな音響に文字通り癒された。

あるいは、第2章においては、やっぱり本クァルテットによって委嘱され、世界初演となる”Trans-Trans”の様々な楽器、あるいは道具(?)を使用しての遠心力激しい音楽のすごさだろうか。大自然と人間との共生が無常の中にあること、世界は常に変化し、流れていることを音と舞踊で示してくれた、そんなことを感じさせてくれる無心の演奏だった(日本舞踊とのコラボレーションの美しさ)。パーカッションの可能性が大いに広がる、革新的カタチを生み出そうとするアンサンブルの才能に僕は惚れ惚れした(途中のMCで山縣さんも言っていましたが、彼らは人生一体何週目なんでしょう?笑)。遠く府中まで出掛けて良かった。

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