
人類の幸せとは何か?
我々、SHOCKERは常に自らへ問いかけています。
“幸せ”という字から一本、抜くと“辛い”という字になります。
その二つは紙一重、なのかもしれません。
あらゆる可能性を我々SHOCKERは否定いたしません。
それぞれの幸せの形を組織の力をもって、全力で肯定いたします。
~「シン・仮面ライダー」プログラム
庵野秀明脚本・監督「シン・仮面ライダー」は勧善懲悪の物語でなかった。善悪を超えたところにおそらく答があることを庵野秀明監督は知っている。彼が、一とは真理そのものであり、真理を獲得できるのとできないのとの差が「幸せ」と「辛い」の違いだと理解しているのかどうなのか、それはわからない。德があるかないか。要はそれだけなんだ。
映画の中でアントニオ・ヴィヴァルディのモテット「まことの安らぎはこの世にはなく」RV630が使用されている。それはまさにSHOCKER側のモチーフのようである。映画があまりに厭世的すぎて、その暗さに僕が耐えられなくなったのは、この地上にこそ天国を創造すべき時代が到来しているというのに、かつてのようにこの世とあの世を分断し、善を悪に染めんと、あるいはその逆として戦闘が繰り広げられることに辟易したからだろうか。
(SHOCKERはやはり単なる悪の組織ではなかった。)
真の幸せとは何か?
もちろん立場や状況によって答は異なる。
ただ一ついえるのは、生と死の解決が叶ったときこそ誰にとっても真の幸福が訪れるのだと思う(庵野監督はたぶんわかっている。ただその術がどこにあるのかたぶん彼は知らない)。
モテット「まことの安らぎはこの世にはなく」RV630第1曲アリア・ラルゲットはいつ聴いても美しい。アンケ・ヘルマンの人智を超えた(?)歌唱に何だかとても悲しくなる。音源は異なると思うが、「シン・仮面ライダー」の映画中でこの曲が使用されているのを聴いたとき、僕は思わず震えた。ほどんど幻想のような、地に足の着かない心の状態と同期するように、曲が空虚に響く様に僕は感動した。
Nulla in mundo pax sincera,
sine felle, pura et vera,
dulcis Jesu, est in te.
もう幾何もなく、この世が天国になるだろう。その日は近い。
※参考:2016年9月16日記事