
文学と音楽の統一を試みたロベルト・シューマンの浪漫。
音楽そのものに意味を見いだそうとせずとも、音楽そのものが何より美しい。
精神の高揚を誘発する翳や歪こそがシューマンの音楽のすべて。堅牢な(?)形式の中で自由に飛翔とする業はヨハン・セバスティアン・バッハの所業の模倣なのかどうなのか。
標題から離れてみよう。
ただ一介の、純音楽として傾聴すれば、ピリスの本懐に気づけることだろう。
ピリスはショパンが良い、シューベルトも最高だ。しかし、避けて通れないのはシューマンだ。
とあるインタビューの中でピリスはかく語る。
音楽は宇宙からの問いに答えを与えてくれる芸術だと思う。これが宇宙というものから受けるわたしの感じ方。調和や均衡、数学的なもの、宇宙が抱えるすべてにとても深い秘密がある。また音楽は言語を必要としないものだと思う。他の芸術は時代様式に頼るけれど、音楽はそうじゃない。もちろん音楽も時代とか様式といったものの中にあるわけだけれど、音楽の本質の背後にあるのは別のものだと思う。わたしにとって宇宙を翻訳するものなの。わたしは昔からずっと、天文学や物理学、星のことに興味をもってきたから、音楽に対してこういうイメージをもっているのだと思う。
~「ピアノとピアニスト」Bruce Duffie インタビューシリーズ(4)
こういう見解のピアニストが弾くシューマンゆえの高度な音楽性。僕はそれに惹かれる。
大宇宙と小宇宙の連携ともいうべき、沈着冷静ながら厚みのある表現に言葉がない。あえて「詩的」という言葉は使わずにおこう。巧い。
「森の情景」のあまりの深さ、美しさ。