サディスティック・ミカ・バンド 黒船(1974)

加藤和彦さんが突然亡くなって早14年になる。
僕の加藤さんの最初の認識はサディスティック・ミカ・バンドだったと思う。
(半世紀が経過してもまったく新しい)
ちなみに、きたやまおさむさんとの共作「あの素晴しい愛をもう一度」(1971)は、たぶん中学生になって聴いたのだったと記憶する。

ザ・フォーク・クルセダーズの名作「帰って来たヨッパライ」にまつわるきたやまさんの回想を読んで、加藤和彦さんは真のクリエイターであり、天才だったのだと思った。精神的には決して強いわけではなく、心の病が結果的に彼の命を奪うことになったのだったが、まだまだこれから活躍していただきたいと思う矢先の自死だったので、当時残念でならなかった。

サディスティック・ミカ・バンドの「黒船」。
少年の頃、FM雑誌の表紙を飾ったこの名作を、何だか不思議な心持ちで僕は最初に聴いた。

・サディスティック・ミカ・バンド:黒船(1974)

Personnel
加藤和彦 (vocals, guitars)
ミカ (vocals)
小原礼 (bass, vocals, percussions)
高橋幸宏 (drums, percussions, additional vocals)
今井裕 (keyboards, saxophone)
高中正義 (guitars)

メンバーの錚々たる顔ぶれにまずは驚愕(文字通りスーパーバンド!)。
そして、もちろん圧倒的な演奏力は、ロキシー・ミュージックの全英ツアーの前座として渡英したときもロンドンの聴衆を歓喜に巻き込んだというのだからすごい。

50年近く前のアルバムにもかかわらず、音楽はまったく古びた印象がない。
例えば「黒船」3部作(?)の推進力と、高中正義の完璧なギター・プレイに言葉を失う。
(今から170年前、嘉永6(1853)年旧暦6月3日にペリー提督に率いられ、黒船来航。)

かつてきたやまおさむさんは、インタビューで(文藝別冊「総特集 追悼 加藤和彦」)、加藤さんについて次のように語っていた。

後ろを振り返らず前向きであること。闘うためには後ろを向いたら負けである、という生き方をしたのが加藤和彦だと思います。
(きたやまおさむ)

そしてまた、このように言っておられた。

加藤の自死というものは、前に見えるものが何もなくなっちゃったんじゃないか、ということだと思えるんです。
(きたやまおさむ)

加藤和彦は後ろを振り返らない、前しか見ない人だったときたやまさんは言う。
前が見えなくなったから自死を選択したという表現は、詩人らしくあまりに美しい、否、美し過ぎるようにも思う。たぶん、彼は良くも悪くも自我の強い、実にエゴイスティックな人だったのだろうと思う。いかにも時代の先端を、誰よりも前を歩いたアーティストらしい。

アナログでいうところのB面の抒情に僕は痺れた。
「四季頌歌」の懐かしさ。

産経新聞・話の肖像画「精神科医・エッセイスト きたやまおさむ<5> 遊びで作った『ヨッパライ』」
過去記事(2009年10月17日)

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