モル ドナート ゲッダ ガルス フィッシャー=ディースカウ サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管 シューベルト 歌劇「双子の兄弟」D647(1975.1録音)

フィッシャー=ディースカウの巧さが際立つ。
フランツ・シューベルトの知られざるオペラたち。
彼は31年の短い生涯の中で、未完作品含め28作もの劇場音楽を残した。
あまり舞台にかからないのは、あるいは人気がなかったのは、どうやら台本に問題があったようだ。

1幕のジングシュピール「双子の兄弟」は、1818年から19年にかけ作曲されたもの。

・シューベルト:歌劇「双子の兄弟」D647(1818-19)
クルト・モル(村長、バス)
ヘレン・ドナート(村長の娘リースヒェン、ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(リースヒェンの恋人アントン、テノール)
ハンス=ヨアヒム・ガルス(出納係、バス)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(フランツ&フリードリヒ・シュピース、バリトン)
バイエルン国立歌劇場合唱団(ヴォルフガング・バウムガルト合唱指揮)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1975.1録音)

双子の兄弟の人違いを軸にしたドタバタ劇。シューベルトはあえて「笑劇」と名づけたというのだから、台本の筋にはあまり期待できない。しかし、シューベルトが付した音楽は快活な序曲からやっぱり素晴らしい。

このように随所にロッシーニの影響が感じられる書法が見られると同時に、時代を先取りした和声進行を行なっており、自ら「笑劇」と呼んでいるにもかかわらず、音楽的には「笑劇」にはもったいないような、工夫の多い作品になっている。
井形ちづる著「シューベルトのオペラ オペラ作曲家としての生涯と作品」(水曜社)P118

ベートーヴェンが死に際に「諸君、喝采を! 喜劇は終わった」と言ったとか言わないとか。この世界は確かに仮の世界であり、何があろうと歓喜に違いない。それを見抜いていたのかどうなのか、あえてコミカルな物語に高尚な音楽を付そうとしたシューベルト。「ロッシーニ旋風」最中という時代の趨勢の中にあって、しかも独自性を失わないシューベルトは天才だった。

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