The Doobie Brothers “What Were Once Vices Are Now Habits” (1974)

だが、普通、世の中に妥協するといい、生きていく以上当然な屈折だと考えているのは、ほとんどが実は社会への適応ではなくて、そういう名目において自分自身に妥協してしまっているのだ。世の中はこういうものだとか、やむをえないことだなどといって、つまりは己れの非力を慰め、ごま化しているにすぎない。背くことのできない約束ごとと思いこんでいるのは、実は架空の、自分の影のようなものだ。
絶対に自分自身と妥協しないことを決意しなければいけない。

「原色の呪文」序—呪術誕生
岡本太郎「原色の呪文 現代の芸術精神」(講談社文芸文庫)P13

泥臭いというのか、どの楽曲もストレートでありながら、とはいえ色合いは異なり、アタックの強烈な音にノックアウトされる。動のトム・ジョンストンに対する静のパット・シモンズ、好対照の創造者・ヴォーカリストが繰り出すエネルギーとパワーは50年が経過した今でも僕たちの肺腑を抉る力に漲る。

「ドゥービー天国」とは、なんとうまい邦題だろう。2人のオリジナル・メンバーとスティーリー・ダンからゲストとして参加している(後にメンバーとなる)ジェフ・バクスターの織り成す光と翳。パット・シモンズの生み出す作品、”Black Water”や”Tell Me What You Want (And I’ll Give You What You Need)”にみるアコースティックな温かさとコーラスの妙味、一方、トム・ジョンストンの作となる”Song to See You Through”や”Down in the Track”の刺激的なエレクトリック・サウンドと解放されるリズムの饗宴。多彩だ。

・The Doobie Brothers:What Were Once Vices Are Now Habits (1974)

Personnel
Tom Johnston (acoustic and electric guitars, lead and backing vocals)
Patrick Simmons (acoustic and electric guitars, lead and backing vocals)
Tiran Porter (bass, backing vocals)
John Hartman (drums, percussion)
Michael Hossack (drums)

自らに妥協することなく突っ走ってきたトム・ジョンストンが病に倒れ、ドゥービーズはそれまでとは違った道を歩まざるを得なくなった。しかしまた、そのことがドゥービーズをより世界的なバンドにのし上げていった。世の中、何が幸いするかわからない。いや、幸いということがどういう状態を指すのかさえもはや不明だ。

何はともあれ自分自身に妥協しないことだろう。覚悟を決めよと天は言う。
ラスト・ナンバーであり、インストゥルメンタル・ナンバーである”Flying Cloud”がまたバンドの一体感を表す作品で、不思議に悲しく、またとても美しい。

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