My Favorite Things

明日は特別講座を開催する。13日の*AK* the piano duoの事前学習講座としての位置づけ。とにかくコンサート前に十分に予習をし、しっかりと楽曲のバックグラウンドや構成を把握した上で本番に臨むと音楽を聴く悦びが倍加する。特に、「春の祭典」のような20世紀を代表する問題作の場合などは予備知識なしに聴いてもおそらく理解不能で眠くなってしまうのがオチだから、ご来場いただける方たちにしっかり楽しんでいただこうと思い企画したのである。
先にも述べたようにストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」は20世紀初頭にパリのシャンゼリゼ劇場で初演された際、ブーイングの嵐と拍手喝采が入り乱れる前代未聞の大スキャンダルを引き起こした当時としては画期的かつ前衛的大傑作として有名である。とにかく不協和音と変拍子の嵐、人間の本能の「動」と「静」をこれほどまで緻密かつ上手に音化した楽曲は少なくともクラシック音楽の世界ではないのでは、と思わせるほどである。もちろん、ジャズやロック音楽の世界でも同様のスキャンダル的なパラダイム・シフトはその後起こっており、明日はそのあたりから話をしてみようかと思い巡らせているところだ。

今年没後40年を迎えたJohn Coltraneの「Ascension」も前衛的な作品。コルトレーンがいわゆる「調性」の一線を越え「フリー・ジャズ」に足を踏み入れた賛否両論の問題作なのである。あるジャズ・メンはこの作品を聴いて一種のトランス状態に入ったといって激賞しているらしいが、聴き込みが足りないのか、僕自身残念ながらこの音盤の「価値」はいまだ理解できていない。やはり、マイルス・デイヴィスの薫陶を受けていた頃、古き良きモダン・ジャズの申し子であったコルトレーンに一票を投じたい。

John Coltrane:My Favorite Things

パーソネル
ジョン・コルトレーン(テナーサックス、ソプラノサックス)
マッコイ・タイナー(ピアノ)
スティーブ・デイヴィス(ベース)
エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)

コルトレーンがいわゆる黄金カルテットを結成する直前1960年の傑作アルバム。特に1曲目のタイトル曲はミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中曲として有名で、コルトレーンのコンサートでも定番曲となるほど彼が晩年まで愛好した楽曲である。いくつかのライブ録音が残されており、どれ一つとして同じ演奏はなくそれぞれに楽しめるが、やはりこのスタジオ録音盤に聴ける「安定感」と「爽快感」に及ぶものはないように僕は感じる。

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