“The Thelonious Monk Orchestra At Town Hall”を聴いて思ふ

the_thelonious_monk_orchestra_at_town_hall技術的に何がどうと分析して巧いコメントができないことが悔しいのだけれど、セロニアス・モンクのピアノというのは見事な奥行きがあって、予想のつかない展開に溢れ、しかも独特の節回しに目ではなく何より耳を瞠る。本当に不思議なピアノだ。
本人は精神的に不安定で、日常生活には相当な支障を来したそうだが、真の芸術家というのは得てして現実的でなく、それがゆえにまた「神」のような作品を多く生み出すもの。

ニューヨークのタウンホールでの実況録音盤を繰り返し聴きながら思った。ベースとドラムスが繰り出す安定したパルスの上に、ホーンが圧倒的存在感で縦横に旋律を奏で、さらにモンクのピアノ・ソロにとって代わるその瞬間に何という「歌の愉悦」が感じられることか。聴衆を楽しませるというよりあくまで自身がただ楽しむといった風情で常に音楽がやりとりされるよう。もちろんそれを聴く人々はただただ圧倒的な音楽にひれ伏すかのように黙然と耳を傾ける。

モンクと7人のホーン奏者が織り成す「音の芸術」は、モンク作品に何やらアレンジを施したホール・オーヴァートンの力量なくしては成し得なかったものなのだとか。

The Thelonious Monk Orchestra At Town Hall(1959.2.28Live)

Personnel
Thelonious Monk (piano)
Jay McAllister (tuba)
Robert Northern (french horn)
Eddie Bert (trombone)
Donald Byrd (trumpet)
Pepper Adams (baritone sax)
Charlie Rouse (tenor sax)
Phil Woods (alt sax)
Sam Jones (bass)
Art Taylor (drums)

例えば、”Friday The 13th”。暗澹たる心を解放する音楽は僕たちの精神にも多大な影響を与える。いかにも踊るようなピアノに哀愁を聴きとり、しっとりとした安寧の響きに怒りを感じとるのは、彼の精神が二分され、内側で葛藤を起こしているという証なのかどうなのか・・・。
そして、“Monk’s Mood”はタイトル通りのメロウでアンニュイな音楽だが、ホーンの気怠い雰囲気以上にどこか神聖で敬虔な祈りを思わせるのは、やっぱりモンクの内側と外側との乖離によるものなのかどうなのか・・・。
さらに”Off Minor”の前進性とトランペット・ソロの爽快なメロディに釘づけ。
創造者セロニアス・モンクと人間セロニアス・モンクの間にあるものは??
おそらく本人は表裏など微塵にも感じていないはず。
しかしながら、そのギャップこそがモンクの音楽を傑作足らしめる要因の大きなひとつなのだろう・・・。

 


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