日本の心

先日の新人研修には中国からの留学生くんが参加していた。小学校の時に父親の仕事の都合で来日し、日本の小学校で学んだ後は中学高校が現地のインターナショナル・スクールで、そして大学はまた日本で過ごすという、とても活動的で積極的、前向きな青年だった。それに何といっても流暢な日本語。彼曰く、最も多感で吸収しやすい時期に日本にいたから、言葉のニュアンスまでもきっちり理解し、操ることができるようになったのだと。脳みそが柔らかい時期にこそ、言葉や音楽をどんどん知り、自分のモノにすることが容易く、ベストなのだろう。

そんな彼でも、やはり日本語というのは世界でも稀にみる言語で、その侘び寂に通じる擬音語などは当然中国語に存在せず、通訳などをする時にどう表現していいかいつも困るらしい。「雨がパラパラと降る」、「雨がザーザーと降る」。その違いは当然明確に我々には認識できる。でも、彼らの国にはないらしい。日本語はとても美しい、そして昨日的な言語だと彼は感嘆していた。

そんなに難しい言葉を物心ついた頃から話し、読み書きをする我々日本人はやっぱり特別な民族なのだろうか・・・。

今、日本人は真に岐路に立たされている。意識しようがしまいが、現実を直視せざるを得ないところまで追い詰められていることは確かだ。僕の周りでも被災地にボランティアに行く、あるいは行きたいという若者が増えてきた。現地では猫の手も借りたいほどらしいので多くの若者たちが意識を持って参加しようとすることは大賛成。微力であるにしても身体を張って「真実」を目にすることは今後の人生にとても役立つだろうから。

そういえば先日、石巻市に向かう途中、松島を通過した。「松島や ああ松島や 松島や」という歌はてっきり芭蕉が作ったものだと思っていたが、よくよく調べてみると江戸時代後期に相模国の狂歌師田原坊が作ったものらしい。歌になるほどの絶景はどうやら津波の影響が少なかったのか、それほど荒んでいるようには見えなかった。

日本人の心、侘び寂・・・、単純な構成の中に深い深い意味合いを持つ表現。いつどんな時でもそういう心情は忘れたくないもの。

Sonny Rollinsの”The Solo Album”を繰り返し聴いていたら、妻が消せという。前人未到の1時間にわたるテナーのソロ・コンサートの完全収録盤なのに・・・(笑)。単純で簡潔な音の連なりだが、確かにサックス1本だと間抜けに聴こえてしまうのか・・・。

お耳なおしにGeorge Winston。

George Winston:Forest

相変わらず、彼のピアノ・ソロは寂しくも美しい。それこそ日本人のもつ「心」に通じる何かがそこにはある。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
岡本さんの本ブログのコメント欄で、私は以前から何度か、原子力発電によって生ずる核廃棄物は、火力発電による二酸化炭素排出よりはるかに危険だと指摘していましたが、まさか、こんなかたちで現実の問題になるとは思ってもみませんでした。

私たちの日本は、今回の大震災による原発事故で、大量の放射性元素を、日本国土のみならず、母なる海にも垂れ流し続け、音楽を伝えるために必要な神聖な空気にも撒き散らし、世界中を汚染しつつあります。
風評被害だという前に、中国人の方にもそうですが、世界中の方々に謙虚に謝罪しなくてはなりません(もし北朝鮮が同じことをやらかしたら、日本人はどう反応するでしょう?)。
東西冷戦時代の超大国による核実験はどうだったんだという人もいますが、何十年、何百年、何千年、いや、何万年にもわたる地球への汚染は、今回の事故の方がはるかに深刻だと予想します。
人類は分不相応に、原子力という悪魔の力を借りてエネルギーを過剰に消費し、繁栄を謳歌していたのでしょうね。どこかの都知事のように今回の震災を天罰だと言うのなら、天罰は私達みたいな被災地の外の日本人や、東京23区に住む人たちにも平等に下されるべきでしょうね。

原発事故を契機に、否応なしにライフスタイルを見直さなければならなくなりましたね。地球の資源も有限ですし・・・。

http://www.youtube.com/watch?v=Ldj5xLPEV0o
森が泣いている。海も泣いている。

子供たちに、この汚染された地球環境を、絶対に受け継がせたくありません。

本日は、娘のピアノ発表会の日です。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
そうですね。このブログでも何度か書いていただいておりました。
その時は正直まったく実感を持っておりませんでした。

>人類は分不相応に、原子力という悪魔の力を借りてエネルギーを過剰に消費し、繁栄を謳歌していたのでしょうね。
>原発事故を契機に、否応なしにライフスタイルを見直さなければならなくなりましたね。

同感です。この上は、国民一人一人が謙虚に真の意味で自然と共生してゆく意識をもたないとですね。
ジョージ・ウィンストンの「セプテンバー」、こちらも名盤です。

>本日は、娘のピアノ発表会の日です。
ご苦労様です。良い会になることを願っております。

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