シゲティ カザルス ヘス ブラームス ピアノ三重奏曲第2番ハ長調作品87(1952.6録音)

今宵もカザルスのブラームス。
第2番の方は、ヴァイオリニストがスターンからシゲティに変わっている。
この違いがまた如実に表れていると思う。
どちらかというと晦渋な印象の第2番は、長らく僕がとっつきにくいと感じていた作品だ。
晦渋さに晦渋さを掛けたらば、晦渋でなくなったという印象。
つまり、シゲティの決して美しいとは言い難い音色がブラームスの晦渋さを打ち消すかのような効果をもたらしたということだ。

奏者が一人代わるだけでこんなにも作品の印象が変わるのかと驚くばかり。
カザルスもヘスも、相変わらずの彼らの音を維持しているのだから実に興味深い。

・ブラームス:ピアノ三重奏曲第2番ハ長調作品87(1880-82)
パブロ・カザルス(チェロ)
ヨーゼフ・シゲティ(ヴァイオリン)
デイム・マイラ・ヘス(ピアノ)(1952.6録音)

プラード音楽祭の記録。
交響曲第3番やピアノ協奏曲第2番が書かれていた、ブラームスの創作力が最も充実していた時期に(幾度もの中断をはさみ)生み出された傑作三重奏曲を、稀代の名手たちが協調的に紡ぐ(平和への)祈りの名演奏。

若い頃は、「晦渋」として理解が困難だった音楽が、年齢を重ねてか心に沁みる。
カザルスが言うように、すべての音楽は「祈りのように人を高める」。
僕が18年もの間、ほぼ間断なくブログ記事を書き続けるのも(僭越ながら)同じような思いからだ。

私がいなくなっても、プラード音楽祭はつづけなければならない。私がはじめたこの活動は、存続しなければならない。音楽は祈りのように人を高め、人びとを結びつける。この活動を終わらせてはならない。私のまわりにいた人びと、これからやってくる人びとが、つづけなければならない。
(パブロ・カザルス、1962)
ジャン=ジャック・ブデュ著/細田晴子監修/遠藤ゆかり訳「パブロ・カザルス―奇跡の旋律」(創元社)P94

まさに天命のようなカザルスの活動(プラード・パブロ・カザルス音楽祭)は、60年以上経過した今も続いている。

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