スターン カザルス ヘス ブラームス ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調作品8(1952.6.30&7.1録音)

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善に傾く頑なさも争いの種だということに僕たちは気づかねばならない。
落としどころはどこか、常にそんなことを考えることはないが、駆け引きなく無心で事を推し進めることが大切だ。

良心から発露されたカザルスの音。
数多の音楽家の心を動かしたびくともしない信念こそ、行動する人パブロ・カザルスの真髄であり、その再現こそ彼の生きる意味だった。
プラード音楽祭の始まり、そのエピソードが面白い。

カザルス ゼルキン ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番ほか(1953.5Live) カザルス オーマンディ指揮プラド音楽祭管 シューマン協奏曲(1950Live)ほかを聴いて思ふ カザルス&ゼルキンのベートーヴェン作品5-1&作品102-2(1953.5Live)を聴いて思ふ カザルス&ゼルキンのベートーヴェン作品5-1&作品102-2(1953.5Live)を聴いて思ふ イストミン、シュナイダー&カザルスのシューベルト三重奏曲第1番(1951Live)を聴いて思ふ イストミン、シュナイダー&カザルスのシューベルト三重奏曲第1番(1951Live)を聴いて思ふ イストミン、シュナイダー&カザルスのベートーヴェン「大公」トリオ(1951Live)を聴いて思ふ イストミン、シュナイダー&カザルスのベートーヴェン「大公」トリオ(1951Live)を聴いて思ふ

カザルスは、この音楽祭を内輪の祭りにすることに決めた。参加者は自分の利益を求めず、各人が音楽評論家に宣伝することも禁じられた。リハーサルの数ヵ月前に、地元と外国の新聞が、音楽祭の小さな記事を載せた。しかしすでに人びとは、これが「音楽会の大事件」であることを知っていた。
ジャン=ジャック・ブデュ著/細田晴子監修/遠藤ゆかり訳「パブロ・カザルス―奇跡の旋律」(創元社)P77

パブロ・カザルスを知る人にとっては大事件だったに違いない。
しかし、寒村プラードの住民の多くにとっては世界中から押し寄せる人波で恐怖でしかなかったらしい(何せホテルの部屋数は30しかなかったというのだから)。

当初、この音楽祭は、プラードの住民にはあまり理解されていなかった。彼らはただ、着飾った「外国人」(当時、コンサートの聴衆は夜会服を着るしきたりがあった)が自分たちの町に殺到したことに驚き、おびえていた。カザルスは祖国を追われた自分をむかえ入れてくれたこの町の人びとに敬意を示すため、すべてのコンサートの最後に教会前の広場で演奏し、6月11日はプラードの住民をコンサートに招き、終了後には立食パーティーを開いた。
~同上書P80-81

バッハを記念してスタートした音楽祭も回数を重ねるにつれ大きく広がっていった(バッハ音楽祭からパブロ・カザルス音楽祭へ)。

・ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調作品8(1854)
アイザック・スターン(ヴァイオリン)
パブロ・カザルス(チェロ)
デイム・マイラ・ヘス(ピアノ)(1952.6.30&7.1録音)

滋味深きヨハネス・ブラームス。
当時21歳の若者の作曲とは思えない老練の筆。天才を発見したロベルト・シューマンもさぞかし吃驚したことだろう。

ヘスのピアノを土台にカザルスのチェロに若きスターンのヴァイオリンが丁々発止で挑む。
ヘスはあくまで中庸に、淡々とブラームスの意味を説こうとする。
色気を出すのはスターンであり、一方、スターンの挑戦をがっぶり四つで受け止め、カザルスはブラームスの心情を心を込めて歌う。

何よりプラードに集まってくれた公衆に向けての、平和をアピールするカザルス。
その後の、カザルスの祈りが世界を巻き込んでいく、その様子に言葉を失う。

音楽祭はつねに大きな反響をよび、フランス大統領ヴァンサン・オリオールやベルギーのエリザベート王妃といった人びとまでもがやってくるようになった。
しかしその裏では、運営や資金調達にまつわるさまざまな問題が生じていた。参加する音楽家たちが費用を負担するようになっていたが、彼らは「われわれは幸運だ。金はかかるが、どれほどのことを学んでいるかわからないのだから」といっている。事実、カザルスのもとで演奏することは、値段がつけられないほどの価値があった。

~同上書P85-86

カザルス、スターン&ヘスのブラームス三重奏曲作品8(1952Live)を聴いて思ふ カザルス、スターン&ヘスのブラームス三重奏曲作品8(1952Live)を聴いて思ふ

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