母!

数年前、ムターがアンドレ・プレヴィンと結婚したというニュースを聞いたときぶっ飛んだ。
確か彼女の初来日は81年、カラヤン&ベルリン・フィルに帯同しての東京文化会館での公演だったと記憶している。ともかく当時高校生だった僕は当然ベルリン・フィルの高額のチケットを入手できるはずもなく、テレビで放映されたベートーヴェンのコンチェルトを聴いて一目惚れならぬ一耳惚れをしたことを昨日のようによく覚えている(今も大変な美形だが、当時はとても可愛いお嬢であった)。
早速ムターのLPを何枚か買い集め、毎日のように聴いた。そして、翌年82年の「大阪国際フェスティバル」に出演するということでわくわくして出掛けたのである。その時のプログラムはモーツァルトの第5協奏曲とブラームスの協奏曲。外山雄三指揮の大阪フィルをバックに18歳とは思えない素晴らしい演奏を披露してくれた。以来、確かに彼女がレコーディングしたCDはほとんど聴き、来日すれば結構な頻度で聴いてはきたのだが、どうもいま一つ感動に程遠い印象が拭えなかった。

モーツァルト:ピアノ三重奏曲集
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
ダニエル・ミュラー=ショット(チェロ)

プレヴィンという音楽家はもともとジャズ畑の出身だが、ジャンルの壁を乗り越えて今やクラシックの指揮者でもあり作曲家でもある。ある意味バーンスタインを凌ぐ天才なのだ。その夫のサポートを得て、ムターは生き返ったようなチャーミングで素晴らしい名演を聴かせてくれている。プレヴィンの繰り出す優しさに溢れたピアノ演奏に寄り添うように織り成されるムターのヴァイオリンは華凛でモーツァルトの楽しさをうまく表出している。なるほど、再婚相手にプレヴィンを選んだ理由がよくわかった。

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