フィリップ・グラファンのペイペル&エッシャー「ヴァイオリン・ソナタ集」を聴いて思ふ

pijper_escher_graffin半音階を多用した音楽が気怠い夏の夜に似合う。最初のソナタを聴いてクロード・ドビュッシーかと思ったけれど・・・。ギリギリのラインで調性を逸脱しない、この斬新な響きが心を揺さぶる。
オランダの現代作曲家(といっても1947年に亡くなっているので戦前の人)、ウィレム・ペイペルのヴァイオリンとピアノのためのソナタ。

芸術に破壊や挑戦はつきものだけれど、過ぎると及ばず。何事も然り。いわゆる「前衛」ではない、しかし「革めて新しい」音楽が持つエネルギーは、人の感性を刺激し、挑発する。

そして、1931年に作曲され、ゾルタン・セーケイに捧げられた無伴奏ソナタが哀しくも美しい。バッハに始まるこの種の音楽は、ヴァイオリンという楽器の奥深さを如実に示す。4つの楽章はアタッカで奏され、冒頭楽章から鬼気迫る「気怠さ」(?)に支配される。その上、わずか3分ほどの第3楽章アダージョの祈りの深さと言ったらば・・・。
ペイペルのこのソナタは1932年3月22日に(何と僕の生まれるちょうど32年前!)初演されているそうだが、その演奏会はハンガリーとオランダの演奏家及び作曲家の協力の下なされた、心温まるものだったという(ゾルタン・コダーイの二重奏曲とオランダ初演であるエルンスト・トッホの「ディヴェルティメント」がプログラムに組み込まれていた)。

ウィレム・ペイペル:
・ヴァイオリン・ソナタ第1番(1919)
・無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(1931)
・ヴァイオリン・ソナタ第2番(1922)
ルドルフ・エッシャー:
・ヴァイオリン・ソナタ(1950)
アレクザンデル・フォールモーレン:
・ヴァイオリンとピアノのためのパストラーレ(1940)
トン・デ・レーウ:
・ソナチナ
・オランダのクリスマス歌曲による即興曲
フィリップ・グラファン(ヴァイオリン)
イェルガー・ブランケン(ピアノ)(2010.12.16-18録音)

ソナタ第2番も揺れる。何という暗く虚ろな響き・・・。第1番からわずか3年後の作品はいかにも「前衛性」を帯びるようになるものの(特に第2楽章の細かい音符の動き!)、第3楽章にみる息の長い旋律(愛の囁きか!)は浪漫の極みであると僕には聴こえる。

知られざる作曲家の知られざる佳品を耳にする醍醐味!!
発見があり、感動があり、何より「音楽」の持つ魔法にあらためて心奪われる。
エッシャーもフォールモーレンも、もちろんデ・レーウも素晴らしい。
しかし何より秀逸なのは、おそらくかなりの技巧を要するであろうこれらの作品を難なく弾きこなし、しかも情感込めて歌い切るフィリップ・グラファンの腕であり、そしてその音楽性にぴたっとくっついて協働作業を見事に完結させるイェルガー・ブランケンの繊細かつ大胆なピアノの伴奏にあると断言する。実演で触れてみたい。

 


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3 COMMENTS

水本桂

こんにちは。
突然のメッセージで失礼いたします、

フィリップ グラファンの紹介を拝見いたしました。
共演させていただくことも多く、大変嬉しく思いました。

グラファンが今年の10月18(福岡)20日(東京)で演奏会をします。
イザイ音楽祭ジャパンのプロジェクトが開催され、音楽監督として招待されています。
イザイの作品、献呈された作品、彼の先生の作品、初演作品などがプログラムで、
この音楽祭にために書かれた、編曲作品もあります。
詳しくはサイトをご覧くださいませ。

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岡本 浩和

>水本桂様

こんにちは。魅力的な情報をありがとうございます。
フィリップ・グラファンさんの実演は聴きたかったのでこれは伺うようにします。
楽しみにしております!

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