選ばれし者

ケネス・ブラナー監督の「魔笛」を観た。舞台を第一次世界大戦に移しての見事な演出。原作では支離滅裂といわれているストーリー展開も無理なく、純粋にドラマとしても楽しめた。序曲から映画が始まるが、原作のドイツ語に対し本映画は英語バージョン。「魔笛」のオペラをよく知っている者からすると相当違和感があったが、それも数分も経たないうちに気にならなくなった。

そもそも「魔笛」はモーツァルトが死の年に書き上げた最後から2番目のオペラ。台本作者のシカネーダーとモーツァルトがフリーメイソンの会員だったことから、第2幕でタミーノが受ける試練の数々などフリーメイソンの象徴が隠されているとしばしば論議されてきた。フリーメイソンに関しては全く知識不足で語るのは憚られるが、一言で言ってしまうと「スピリチュアルな世界」が語られていると考えて間違いない。

宇宙万物の母なるザラストロと救世主として「選ばれし」タミーノ。「マトリックス」や「スターウォーズ」という映画に匹敵するほどのメッセージが隠されているように思われる。映画版は現代人にわかりやすく解釈されており、「スピリチュアル世界」への入口として大変な効果があると思われるが、逆にこの映画で「魔笛」の世界に興味をもたれた方は是非ともオリジナルの歌劇「魔笛」を知っていただきたい。DVDで観るのもよいが、残念ながら他人の演出というのはイコール他人の解釈という欠点もあるので、できれば台本を片手にCDで聴くことをおすすめする。

モーツァルト:歌劇「魔笛」
カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フリッツ・ヴンダーリヒ、ハンス・ホッターほか

※「魔笛」に関しては重厚な演奏を評価する。最近流行の古楽器演奏は軽すぎて面白くない。

⇒旧ブログへ

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む