宇宙人バッハ

友人にバッハの「マニフィカートBWV.243」を絶賛する女性がいる。僕もJ.S.バッハの音楽は好きでよく聴く。マニフィカートも大変によくできた良い楽曲である。
生涯で1000曲以上もの楽曲を残したバッハは「宇宙人」だと思うのだが、いわゆる「教会音楽」と「世俗音楽=器楽曲」に分けて考えた場合、彼が教会の行事のために書いた音楽はどれも「四角四面」に閉ざされたイメージを喚起し、窮屈さを感じてしまうのは僕だけだろうか?キリスト教、それもプロテスタントという「枠」の中で物理的にも概念的にも様々な規制があるだろうし、あくまで「人間」のために書いた曲だから仕方がないことなのかもしれないが(要するに、バッハは「教会音楽」は人間に、「世俗音楽=器楽曲」は神のために書いたのではないだろうか)。

一方、教会とは離れたところで創造された楽曲は、目に見えるあらゆる事象を超えた「宇宙的な広がり」を持つ。例えば、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番。終楽章に有名な「シャコンヌ」をもつ人類至宝の傑作楽曲である。とても一艇のヴァイオリンで演奏しているとは思えない、そして人間の叡智をどれだけ結集してもこれを超えるだけの音楽は生まれ得ないのではないかと感じさせてくれる「神の音楽」である。

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004
チョン・キョン=ファ(ヴァイオリン)

幸運なことに僕はチョン・キョン=ファの無伴奏の実演を2度聴いている。一度目は1998年来日時のリサイタル。2度目は2001年の来日時だ。両方とも会場はサントリー・ホールだった。1個の楽器が大きな会場の空気を包み込み、これ以上ないという至福の瞬間を感じさせてくれたコンサートは後にも先にも稀である。

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