駄作の名盤?

ジャズの世界でもクラシックの世界でもロックの世界でも、いわゆる「トリオ」という編成は稀に見るスーパーグループが生まれる確立が高いように感じる。例えば、初期のビル・エヴァンス・トリオやエマーソン・レイク&パーマー、クリームなど。クラシックならカザルス・トリオ。そして、つい10年ほど前に臨時的に結成されたアルゲリッチ、クレーメル&マイスキーのトリオ。
どうも2人ではなく3人であるというところに何か訳があるようだ。ただし、その3人が個々に優れた演奏能力を持ち、力量が同等の場合に限るが。

ベートーヴェンにもトリオ作品は多いが、異色なのはトリオのための協奏曲。「傑作の森」といわれる時期の初期に位置する珍しい編成の楽曲だが、一般的な評価は決して高いとは言えない。確かに構成や楽想などわかりにくい音楽ではないのだがインスピレーションに乏しく精彩を欠くゆえ、すぐに飽きが来る。おそらく各ソロ楽器の活躍のバランス、技量のバランスがとれていないことが最大の問題なのかもしれない。(楽聖がなぜこのような作品を書いたのか定かではないらしい)

昨日、とある酒宴の席でベートーヴェンのトリプル・コンチェルトに話が及び、「へぇ」と思うことがあった。どうやら楽曲そのものの書き方に問題があるようだ。ピアノ・パートは初心者のルドルフ大公に向け創られており、極めて優しくピアニストにとっては朝飯前のようにこなせる楽曲である一方、独奏チェロのパートは途轍もなく難曲で普通のチェリストはあまりやりたがらないらしい。それと、半分冗談のようだが、要求される技巧の不公平さから同額のギャラだと喧嘩になるらしい(笑)。

とはいうものの、この曲にも名盤が存在する。

ベートーヴェン:ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲ハ長調作品56
ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

流石に20世紀のソ連を代表する名手が独奏者として集まっただけある。しかも、伴奏がカラヤン&ベルリン・フィルとなればこれ以上の組み合わせはない。
滅多に聴くことのないCDだが、駄作の名盤(?)として記憶にとどめておくのもいいかと。

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