神宿る音楽

マーラーの音楽はとても「人間的」である。どの楽曲も「死」の恐怖との闘いがモチーフになっている。あまりに人間臭いゆえ、若い頃はのめり込んで聴くことも多々あったが、最近は食傷気味で滅多にCDトレーに乗っけることはなくなってしまった。
一方、マーラーの師匠で音楽史上では同じ部類で括られてしまう作曲家にアントン・ブルックナーがいる。尤も、似ている部分といえば長大な交響曲を一生懸けて書いたということぐらいで、その内容といえば全く別格の域にあり、芸術的には圧倒的にブルックナーに軍配が上がると僕は確信している。

ブルックナー指揮者といわれる存在は古今東西多数いるが、日本人としてこの時代に生まれ育ったという意味で幸せなのは、朝比奈隆という最高のブルックナー指揮者と同時代を過ごせたということに尽きるかもしれない。2001年の年末に惜しくも亡くなってしまった朝比奈だが、晩年の生演奏は何十回聴いたことだろうか・・・。

印象に残る演奏は数多いが、中で忘れられないのはやはり最後の東京公演であろうか。曲目はブルックナーの交響曲第8番。年を重ねるたび一般的な指揮者の例とは相反してテンポが速くなっていったことが特長である。

ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ハース版)〈2001.7.23&25〉
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団

御大が舞台に出てきたときの印象は忘れられない。たった数ヶ月前の公演に比べ痩せ細り生気が感じられなかったからだ。もちろん演奏が始まってからは若々しいテンポによる推進力で空前絶後の名演奏を成し遂げたのだが。この後同年の11月には特別公演が予定されていたが、残念ながら体調不良でキャンセル、そのまま帰らぬ人になってしまったのである。

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