北の大地と宇宙

シベリウス:交響曲第6番ニ短調作品104を聴く。

レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

シベリウスといえば第2交響曲が別格扱いで人気曲である。若い頃はよく聴いたものである。確かに名曲であるとは思う。しかし、シベリウスの7曲の交響曲の中で最も好きなのはこの第6交響曲である。そもそも「別次元の音楽」。音のクラスターが相当に高いのである。「宇宙」を限りなくミニマルに表現した大傑作だと断言できるだろう。「魂」が「宇宙」に繋がる瞬間を体感できる音楽というものはそうざらにあるものではない。ゆえにどんな指揮者で聴いても基本的には感動する。

いつだったか雑誌か何かで作曲家の吉松隆氏がこの曲について言及している記事があり、彼は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に準えてこの曲への想いを書いていたことを思い出す。
—————————————————
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問をかけました。
—————————————————
これは、宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」の有名な出だしである。
作品のテーマは「性善説」−「献身」。童話にしては少々難しい。しかしながら、読み進めていくと、その内容は幻想的で心が洗われる。そして素直な気持ちになれる。

賢治は33歳という若さで亡くなった夭折の天才。一方、シベリウスは100歳近くまで生きた「生きる化石」的天才。共通点は二人とも北の暗い大地に生まれ育っているということくらいか。そういえば、巨匠ベルイマンも北欧の人間である。

要は、ただ僕が「暗い」モノを好きなだけなのだろう。。。

⇒旧ブログへ


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む