朝比奈隆指揮大阪フィル ブルックナー 交響曲第8番(ハース版)(2001.7.23&25Live)

僕はブルックナーの交響曲第7番で朝比奈隆に出逢った。
初めて聴いた実演は、ブルックナーの交響曲第8番だった。上野の東京文化会館で聴いたそれは、想像より若々しい、推進力抜群の演奏だった。

最後に聴いた実演もブルックナーの交響曲第8番だった。サントリーホールは、恒例の大阪フィル東京定期でのそれは、言葉にならないほどの崇高さと透明さを獲得した、まるで「白鳥の歌」のような名演奏だった。

朝比奈隆が亡くなって、僕はしばらく実演でブルックナーを聴く機会を封印した。特に意識したわけではなかったのだが、御大のブルックナー以外聴く気が失せたことには違いない。

ただそれは間違いなく刷り込みだった。その後何年も経ってからあらためて様々な指揮者のブルックナー演奏に触れることになるのだが、唯一無二ともいえる凄演も多々あった。そういう意味では、ある種の先入観が僕に他の指揮者のブルックナーを聴くことを阻んでいたことは間違いない。今となってはお恥ずかしい限りだが、それほどに朝比奈隆のブルックナー体験は強烈だったのである。

残された多くの録音は素晴らしい。しかしながら、たくさん実演に触れ得た、そのときの圧倒的な感動には残念ながら至らない。ただし、記憶が鮮明に蘇ることは確かで、記憶を喚起するツールとしての音盤は貴重だ。録音とはそういうものなんだと思う。

僕が東京で最後に聴いた朝比奈隆のブルックナーの交響曲第8番ハ短調。
あの日の記録を久しぶりに聴いて、あの日あの時の、何だか急に衰えた感のあった朝比奈御大の登場シーンと、終演後の一般参賀での直立不動で熱狂する聴衆に礼をしながら(おそらく)涙する姿を思い出した。それこそ生身の御大を見た最後の機会だった。

・ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ハース版)
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団(2001.7.23 &25Live)

何と神々しい!
朝比奈隆が没して早22年。
やっぱり朝比奈のブルックナーは素晴らしい。

過去記事(2007年7月29日)


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