ブルックナーはモーツァルト同様、音楽的には歴史上唯一無二の天才であった。
しかし、生涯結婚せず(というよりできなく)、人間としてはかなり問題や癖があったらしい。女性に関しても、ロリコンでかつ臆病。仕事に関しても極度に他人の評価が気になり、作品を引っ込める、書き直すということを死ぬまで続けた。
ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(改訂版)
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
25年以上前、「レコード芸術」誌上で「無人島にもって行きたい1枚のレコード」という特集記事があり、そのことをなぜかふと思い出した。
そこにはリヒターによるバッハの「マタイ受難曲」やカザルスによる「無伴奏チェロ組曲」などの名曲が挙げられていた。中で、燦然と輝く1曲、それがクナッパーツブッシュのブルックナーの交響曲第8番ハ短調であった。
当時、朝比奈隆の演奏によりブルックナーに開眼させられ、とある評論家が絶賛するこの音盤を聴き、じわじわとその巨大さ、深遠さに身も心も押し潰されるほどのめり込んでいた記憶がある。来る日も来る日もこのLPを擦り切れるほど聴いていた。
ところで、この曲は作曲者が第7交響曲の成功後ただちに作曲にとりかかり、自身最高傑作と自負した「人類至宝」の交響曲である。とはいえ、初演の際には指揮者や演奏者から「演奏不能」のレッテルを貼られ、極度に自信を喪失し、例によって何度も改訂作業を施した名曲である。初めて聴くと当時の一般大衆同様何が何だかわからないかもしれない。しかし、何度も何度もとにかく聴き続けることである。
ひとたび理解したとき「永遠の至宝」となることだろう。
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