「海」を聴きながら・・・

大自然を前にして、人間のちっぽけさを再確認させられた1ヶ月。人間がどんなに足掻こうが、どんなに新発想を思いつき文明を発展させようが、自然の力には到底敵わない。ねじ伏せられでもしたかのようなこの出来事は我々に何を問うているのか。

こういう状況を目の当たりにすればより謙虚になり、自然と共生しながら生きていくことがベストだが、「文明の利器」に慣れっこになってしまった僕らにそんなことができるのか。昔、ソローの「森の生活~ウォールデン」を読んだ時、共感しながらも自分には絶対に無理だと思ったことを思い出した。滋賀の山奥育ちの僕でも、まるで野生動物のような、一切を自然に任せた生活は到底できないと感じた。それに「断捨離」というが、大事な音盤や書籍類にはまだまだ未練が残る(これでも引越しやら何やらでだいぶ処分したのだが)。まだまだ「達観」には程遠い・・・。

先週、石巻市に行った折、避難所をめぐり被災者の方々にいろいろと話を伺う機会があった。確かに地震は凄かったらしいが、そのものはどうってことないものだったよう。むしろ、その数十分後に現出した大津波が前代未聞で、人間の手ではどうにもならない驚愕ものだったという。多くの人が甘く見ていたということで、地震後すぐさま自動車に飛び乗って避難しようとしたところ渋滞で身動きできなくなり、そのまま津波にさらわれた車が多かったのだと。絶句、である。おそらく自分でも同じような状況に遭遇した場合そういう行動をとっていただろう。身一つで走って高台に逃げ込むことがベストだった模様(やっぱり人間が作りだした機械では自然には太刀打ちできないということか)・・・。

それにしても「水」は人間にとって「空気」と同様大切な資源だが、一方でどんなものをも一瞬にして飲みこんでしまう「武器」にもなることを思い知らされる。それの貯蔵庫でもある「海」に至っては・・・。

ドビュッシー:
・イベリア~管弦楽のための映像
・海~管弦楽のための3つの交響的素描
・牧神の午後への前奏曲
シャルル・ミュンシュ指揮フランス国立放送管弦楽団(1966録音)

そのふわふわとした浮遊感が苦手でドビュッシーの音楽を随分長い間避けていた。「海」についても然り。でも、今はドビュッシーが「海」を通じて何を言いたかったのか何となくわかるような気がする。ドビュッシーこそ妻を捨て愛人と駆け落ちした、人間的観点でいうところの非常識人だったと思われるが、愛人エマ・バルダックとの蜜月が始まった時に創造していた作品が「海」であることからすると、人間の思考では推し量ることができない、自然と一体となった「思考」がこの作品の中に投影されているのかもしれない。大海原の静けさと脅威。「人間(の常識)などとるに足らないちっぽけなものだ、自然の前にひれ伏せ」とこの大作曲家が教えてくれているよう。ミュンシュの指揮は相変わらず素晴らしい。

※次回第45回「早わかりクラシック音楽講座」ではいよいよドビュッシーに挑戦します。たくさんの方のご参加お待ちしております。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。

>それにしても「水」は人間にとって「空気」と同様大切な資源だが、一方でどんなものをも一瞬にして飲みこんでしまう「武器」にもなることを思い知らされる。

それは「空気」とて同じこと。
音楽にもなれば、突風、台風、竜巻、爆風といった「武器」「凶器」にもなります。

>ミュンシュの指揮は相変わらず素晴らしい。
同感の極みです。

先日、パスカル・ヴェロ&仙台フィルによるドビュッシー「海」をご紹介しましたが、
http://classic.opus-3.net/blog/?p=3888#comments
本日は、以前にもご紹介いたしましたが、
もうひとつの仙台フィルによる、「海」と「風」に因んだ愛聴盤を・・・。

リムスキー=コルサコフ:『シェエラザード』他
山下一史&仙台フィル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2750928
第1楽章《海とシンドバッドの船》
第2楽章《カランダール王子の物語》
第3楽章《若い王子と王女》
第4楽章《バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲》

>次回第45回「早わかりクラシック音楽講座」ではいよいよドビュッシーに挑戦

大いに期待できます!! 楽しみですね。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
仙台フィルの音盤、こちらの「シェエラザード」も興味深いですね。2月に新国立で聴いた「ゲノフェーファ」は山下さんの棒で、アフタートークも良かったので一層興味がわきます。実は本日は「海」にしようか「シェエラザード」にしようか迷っていたのでこの偶然の一致がとても嬉しいです。
さて、しばらくドビュッシー漬けで勉強しようかと思っております。
いろいろとご教示よろしくお願いいたします。

ところで、お嬢様の発表会はいかがでしたか?

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