共同作業

ファニー&フェリックスに対抗できるコンビといえばレノン&マッカートニー以外ないだろうと今日もThe Beatlesを一人静かに聴く。午後、久しぶりに強烈な雨が降った。新宿の町をぶらつきながら、メンデルスゾーンの「イタリア」交響曲を思った。ガーディナー&ウィーン・フィルが10数年前に録音したグラモフォン盤には、第2楽章~第4楽章の1833年~34年改訂版が収められているが、この改訂が少しばかり中途半端なもので、結局第1楽章が完成されなかったところをみても、おそらくフェリックスの独断と偏見によってなされた作業なのだろうと推測できる。

改訂された第2楽章の楽譜を見てファニーは次のように書く。
「最初の旋律の変更は、あまり気に入りません。なぜこのように変えたのですか。イ音が多すぎると考えて、それを避けようとしたのでしょうか。もとの旋律のほうが自然でよかったのに」(1834年8月1日付手紙)

明らかに原典版においてファニーの影響が隅々にわたってあることが証明されているようなものである。おそらくメンデルスゾーンの作品の多くはファニー&フェリックスと名乗るべきものなのだろう。メンデルスゾーンはモーツァルトやシューベルトと同様に若くして傑作を書き上げた天才だと古くから認識されているが、10代半ばの八重奏曲にしても「真夏の夜の夢」序曲にしても、その完成度は実にひとりの知恵だけでなされているものとは思えない。2人の協働作業による類稀なる傑作なのだと思えてならない。レノン&マッカートニー(ジャガー&リチャー然り)と同じく、2人でなければならなかった「必然」がそこにはある。単独で成し遂げた名作も良いが、2人で創作した傑作に僕はシンパシーを感じる。

ますますメンデルスゾーンから目が離せない。

良い気分でThe Beatles。僕が初めて彼らの音楽に触れたバンドとして絶頂期にあった頃の録音。

The Beatles:Help!

久しぶりに聴いた。全14曲。うち12曲がオリジナル。生音にこだわったほぼ最後のもの。こんなに開放的で、かつ癒しに満ちた楽曲はなかなかない。不滅なり。

※少し酔っ払っているので頭が回らず。今日はこの辺りで・・・。


5 COMMENTS

雅之

おはようございます。

昨日の話題の続きですが、メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」改訂作業での姉ファニーの関わり方と、マーラー:交響曲第5番改訂作業での妻アルマの関わり方には、女性側が曲を細部までを暗記していたり、写譜を手伝ってたりと、何か似たところがあるんですよね。

マーラーは、メンデルスゾーンの楽曲がファニー&フェリックス姉弟の合作であることをよく知っていて、新妻のアルマがこれからどんなに楽才を発揮しようとも、ファニーがそうだったように黒衣に徹し、決して作曲家として夫を差し置いて表にしゃしゃり出ないで欲しいと、強く願っていたに違いありません。メンデルスゾーン:無言歌作品62-3「葬送行進曲」 、真夏の夜の夢~「結婚行進曲」と、マーラー:交響曲第5番冒頭との関係は、私には、そんなマーラーの自分勝手な男のエゴが見え隠れします。

>ファニー&フェリックスに対抗できるコンビといえばレノン&マッカートニー以外ないだろう

友人同士の合作というと、私は藤子不二雄(藤本弘と安孫子素雄の共同ペンネーム)を思い浮かべたりしますが、同性で友人同士が多いですね。
姉弟ではないけれど、兄妹では、カーペンターズ
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3535957
がありますね。作曲での合作という意味合いではありませんが。
竹内まりや&山下達郎夫妻は、カーペンターズの仕事を意識したのでしょうか?
メンデルスゾーン姉弟の仕事を意識した、マーラー夫妻のように(笑)。

ちょっと岡本夫妻の商売敵になりますが、今年になってよいCDが出ました。

ロマンス~「乙女の祈り」ほか8人の女性作曲家達による作品集 江崎昌子(ピアノ)
【収録情報】
・マリア・テレジア・フォン・パラディス:シチリアーノ
・マリア・アガータ・シマノフスカ:マズルカ ニ長調、マズルカハ長調
・クララ・シューマン:ロマンス 変ホ短調 作品 11-1、
・クララ・シューマン:スケルツォ ハ短調 作品14、ロマンス イ短調 作品21-1
・ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:アンダンテ・カンタービレ
・テクラ・バダジェフスカ:乙女の祈り、かなえられた祈り
・オーギュスタ・オルメス:ジプシーの夢
・ヴィルマ・アンダーソン=ギルマン:ウォーターローの戦い
・リリー・ブーランジェ:古い庭園にて、明るい庭園にて
・クララ・シューマン:ロマンス ト短調 作品11-2、ロマンス 変イ長調 作品11-3
・クララ・シューマン:ロベルト・シューマンの主題による変奏曲 作品20
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3979556

このCDのプロデューサー&レコーディング・エンジニアで、オクタヴィア・レコード社長の江崎友淑さんは、江崎昌子さんの実兄。

岡本夫妻も、江崎兄妹の仕事を意識されるのでしょうか?(笑)

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
確かにマーラーにおけるアルマの関わり方は似ていますよね。
ただし、やっぱり血が繋がっている姉弟と赤の他人という点では違いますね。
マーラーが「決して作曲家として夫を差し置いて表にしゃしゃり出ないで欲しいと、強く願っていた」のに対し、ファニーの場合はどちらかというと時代背景及び父親からの徹底的な抑制(抑圧?)がありました。
それに本人も納得しているように思います(アルマの場合は結局納得していない)。
メンデルスゾーンの作品に「幸せ感」が感じられるのはそういう理由が根底に流れているからだと思います。

そういえば、いろんなコンビが名作を世に送り出していますね。

ところで、ご紹介のCD、以前「レコ芸」でみて買わなきゃと思いつつすっかり忘れていました。
これは興味深いですよね。やっぱりいいですか!

>岡本夫妻も、江崎兄妹の仕事を意識されるのでしょうか?

残念ながら僕らは夫婦で、血がつながっていないですから、江崎兄妹がメンデルスゾーン姉弟とするなら、マーラー=アルマですかね。エゴイスティックにもっと僕が振舞ったほうが上手くゆく??(笑)

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岡本 浩和

>雅之様
おっと・・・。
実は本日マーラーのピアノロールを採り上げようと思っておりました・・・。
午前中勉強会、夜も別の場所で勉強会ということで、午後3時間ほど事務所に戻ったところで、マーラー自作自演が収録されたアルバムを何度か繰り返して聴いておりました。
いや、ピアノで聴くとほんとにそっくりですよね。僕もそう思って聴いておりました。

本日分はこれから書こうと思いますが、先取りされたので予定変更します(笑)。

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アレグロ・コン・ブリオ~第3章 » Blog Archive » 疲れた夜に・・・

[…] 午前中は銀座線「三越前」にあるとある企業の会議室でEQの勉強会。途中オフィスに戻り、夜は有楽町線「新富町」でアクティブブレインの勉強会。パンクしそうな頭を冷やすため、あらためてマーラーでも聴きながらブログでも書こうと開いてみると・・・。 雅之さんから昨日の記事にコメントを頂いていた。何と件のピアノロールとメンデルスゾーンの「葬送行進曲」の話題。さすがに365日中350日くらいはブログ上でやり取りしている仲なので(笑)、同じような思考を持つことは当然といえば当然かもしれないが、やられた!という思い・・・。まぁ、よし。ありがとうございます。 […]

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