またしても「真夏の夜の夢」

ほぼ毎日場所を変え、人前で話をしているが、その分予習も必要になるというわけで、事前の準備に忙殺されている。そんな中よくまぁ音楽を聴いてブログを書く暇があるなぁと我ながら思ったりもするのだが、あまりに根を詰め過ぎるとかえってストレスフルで、少し頭を休めるために、僅かな時間、無心に音楽を聴き、イメージ・空想しながら感じたことや考えたことを文章にするというのは、ある意味僕にとってのストレス発散法なのだろう。発信するだけならこれほどマスターベーション的で、自己中心的なものはないと思うが、毎日のようにきちんと読んでくださる方がいて、しかもほぼ毎回コメントをくださる方がいるとなると、間違いなくひとつのコミュニケーション・ツールであり、大袈裟だが、そこに生きがいややりがいを感じているのだろうと思え、しかも、そのやりとりを通して大層な発見があったり、思考が深まったりするのだからもうこれは病みつきである。「そろそろ止めろ」といわれても「止められない」、そんな興味深さがこの中にはある。

音楽作品の成立過程には、作曲家の生き様や思考が当然反映されているが、聴く側、受容する側の勝手な空想もいっぱい、である。どんな絵を想像して聴いてみても、それは好き好き。何を思ってその音楽を書いたのかなんて、創造者の手紙や証言でも残っていない限りわからないものだから。それに、たとえ言葉が残っていたとしても、それが真実かどうかなんて判断しようもない。マーラーの第5交響曲の背景についても同じ。もちろん有名な第4楽章アダージェットには、妻アルマへの愛が描かれているのは間違いないゆえ、全曲が「愛の告白」かと思えば、さにあらず。面白い。

ルドルフ・バルシャイがユンゲ・ドイチュ・フィルハーモニーを振って録音した第5交響曲を聴いた。かのアダージェットももたれず美しい(マーラーが初演では7分30秒で流したようだが速すぎはしまいか・・・。僕はバーンスタインの遅いテンポのとろけるような耽美性がやっぱり好き)。(それにしてもライヴとは思えない精緻なアンサンブルに度肝を抜かれます)

ところで、「真夏の夜の夢」。何度聴いても良い曲。特に、最近は抜粋盤しか見当たらない中、プレヴィンがロンドン響と録音した全曲盤がおすすめ。

メンデルスゾーン:劇付随音楽「真夏の夜の夢」作品61
リリアン・ワトソン(ソプラノ)
デリア・ワリス(メゾソプラノ)
フィンチリー児童音楽グループ
アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団

プレヴィンの音楽性の幅広さが堪能できる、とっておきの1枚。シェリー・マンとの「マイ・フェア・レディ」なども最高にいかすプレヴィンらしい演奏を披露するが、指揮者としても超一流。ジャズができる人のクラシック音楽は、懐が実に深い。変幻自在の棒で、愛らしい楽曲を極めて美しく作り出すかと思えば、壮大な楽曲では豪快にかつ自由に歌い上げる。

4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

プレヴィン指揮ロンドン響による1970年代の一連の録音は、ライヴのように生き生きとしていて、どれもが本当に最高ですよね。こういう高揚感のあるクラシックのセッション録音って、意外にあるようで少ないです。

「結婚行進曲」の話題なので、ちょっとプレヴィンの私生活から、徒然なるままに空想を・・・。

・・・・・・ハリウッドの著名人にはよくあるように、プレヴィンは結婚回数の多い人物であり、映画『くちづけ』(THE STERLINE CUCKOO )主題歌の作詞家ドリー・プレヴィン(Dory Previn)、女優ミア・ファロー(間に韓国人の養女スン=イーがいる)、ジャズ・シンガーのベティ・ベネットなどとも結婚歴がある。ヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターと2002年に再婚したが、仕事で忙しくて会えないとの理由で2006年に離婚している。彼女とは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集を録音している。・・・・・・ウィキペディア アンドレ・プレヴィンの項より

>聴く側、受容する側の勝手な空想もいっぱい、である。どんな絵を想像して聴いてみても、それは好き好き。

そこでだ、岡本さん! アンネ=ゾフィー・ムターのことですが、89年弁護士と結婚し、’95年に死別、2002年にプレヴィンと再婚、離婚。 それで彼女の人生観、音楽観が変化しないわけがないじゃないですか! それは、そういう体験をした女にしか見ることができない景色を彼女は見てしまった、ということじゃあないでしょうか。

・・・・・・約20年間の現代音楽への取り組みによって、古典への解釈も変わったという。また、指揮活動を始めたためモーツァルトを研究しなおし、「カラヤンにすべてを任せてヴァイオリンに集中するのとはわけが違う。ホルンなどの移調楽器の細かい質問にも答えないといけない」また、「作品は人生と同じで、ただ劇的な曲、甘いだけの曲なんてない。モーツァルトの作品は雲間から差す太陽の光のように年齢を重ねるほどにその音楽の奥深さにひきつけられてゆく」とも述べ、また「モーツァルトの曲は俳句のよう。多くの意味が込められているが、文体は簡潔なように、モーツァルトにも行間を読む能力が求められる。モーツァルトの音楽は静寂に始まり、静寂に消えてゆく。美と静寂を合わせ持つ音楽がモーツァルトだ」と語るなど最近は特にモーツァルトへの傾倒を深めているように見える。紡ぎだす音楽も以前にも増してニュアンスの変化に富み、陰影と幅を増し、技巧の完璧さもさることながら表現に深みを加えつつある。・・・・・・ウィキペディア アンネ=ゾフィー・ムターの項より

「聴く側、受容する側の勝手な空想もいっぱい、である。どんな絵を想像して聴いてみても、それは好き好き」なので、ムターや、彼女がプレヴィンと共演したメンデルスゾーンの録音などを、もう一度しっかりと聴き直してみようではありませんか!

※おススメ盤
ヴァイオリン協奏曲、ピアノ三重奏曲第1番、ヴァイオリン・ソナタ 
ムター、マズア&ゲヴァントハウス管、プレヴィン、ハレル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3646443

(勝手な空想)

カラヤン:「君には今後、たったひとつの仕事しかありません。私をしあわせにすることです。君の役は愛らしい伴侶、理解ある同志です」

ムター:「あの時のカラヤン先生には感謝しているわ。今でも、カラヤン先生の指揮のもとで弾いた時のように崩さず弾くこともできる。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/757153
でも、もう私は、カラヤン先生が望む私ではないの! もう私は、あの時とは違う景色を見てしまったの(そして岡本さんが望む私でもないの!)。 私は私。 私が見たのと似た景色を少しでも眺めたことがある人は、きっと私の今の演奏にも共感してくれると思うわ。今は私を理解できない人も、いつかきっと・・・」

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
いやあ、見事なコメントです!感謝します。
確かに、カラヤン没後のムターの私生活での諸々が彼女の演奏に影響がないはずないですね。
それに、モーツァルトの音楽についての彼女の考えについても100%同意できます。

ちなみに、オススメのメンデルスゾーンの新録、これはやっぱり未聴です。しかし、プレヴィンらとのトリオが収録されているとは知りませんでした(ほとんど無視していたも同然ですな・・・)。おっしゃるような理解をして聴くと変化がよくわかるかもしれません。この際、きちんと聴いてみます。ありがとうございます。

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