誰もがビル・エヴァンスを愛する・・・

午後いっぱいサロンの2つの部屋をお客様が使用されていたので、外出から戻って事務スペースで無言のままPCと対峙。眠くなったので床に横になって5分ほど。わずかな時間でも寝てしまえば随分と頭は冴える。
連休の中日なので街中は騒々しいが、東新宿あたりは不思議に平静。
黄昏時、堕ち行く太陽が驚くほど真っ赤に染まっていた。窓を開け放っていたから同時に気持ちの良い風が部屋の中を駆け抜けて去ってゆく。まもなくこの部屋ともお別れになるのかと少しばかり感傷に耽りながら、独りになるやビル・エヴァンスを。
マイルスの元を離れたエヴァンスが、1958年に録音した音盤。7曲目の”Peace Piece”に差し掛かったところで得も言われぬ感動がこみあげてくる。スクリャービン愛好者だったビル・エヴァンスが、ショパンの「子守歌作品57」をモデルに書き下ろしたといわれるこの楽曲は、タイトル通り平和な静寂の音に包まれ、聴くものを見事に癒す。

50年代の古き良きアメリカといわれていた(というよりそうだと信じられていた)時代の芸術というのはどれも保守的でありながら斬新。いや、この言い方は間違っている。あくまで決められた枠の中で(それはたった3人という最小限のバンド形態であるということも含めて)思考と発想が飛翔し、未来永劫「通用する」作品を作り上げることのできた天才が多かった。

Everybody Digs Bill Evans(1958.12.15, New York)

Personnel
Bill Evans(piano)
Sam Jones(bass)
Philly Joe Jones(drums)

何とまたボーナス・トラックの”Some Other Time”(バーンスタイン作曲!)では、”Peace Piece”のベースラインを使用し、再度泣かせてくれる。エヴァンスのソロ・ピアノの持つ「気」というのは、キース・ジャレットとは少々違って、どうも厭世的なネガティブな匂いが立ち込める。奈落に突き落とされるかのような衝撃が初めて聴いたときから与えられるのだから、おそらくライブで耳にしたら大変なことになっただろう(あー、それにしても美しい・・・)。

「ビル・エヴァンスからは間違いなく色々なことを学んだ。彼はピアノを理想的な形で演奏する」~マイルス・デイヴィス
「ビル・エヴァンスはここ数年で聴いたなかでも最もすがすがしいピアニストだ」~ジョージ・シアリング
「ビル・エヴァンスは極上のピアニストのひとりだと思う」~アーマッド・ジャマル
「ビル・エヴァンスは類稀なるオリジナリティとテイストを持ち、何よりも彼の楽曲の捉え方はそれが演奏法の決定版だと思わせる、稀有な才能を持っている」~ジュリアン・キャノボール・アダレイ

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