まさに縦横無尽。激しいインタープレイあり、例えようもなく儚い響きのソロもまた、とても美しい。
私がやろうとしているのは、自分が楽しめることだ。刺激的なこと—それが私を突き動かし、私のプレイを手助けをする。そういうふうに感じる。それはまるで、次にどこへ行くか分からないような感覚だ。アイディアはあっても、そこにはいつも自然発生的な何かが起こる。このフィーリングは、私にとって、グループ全体を導くものだ。ジョンのプレイも、自分には想像もつかない方向へと転がっていく。マッコイも何かしらやるし、エルヴィンやジミーもそう。彼らはソロで何かしらをやる。リズムがいつもとは違う場合もある。そういったことが私を刺激するんだよ。
~クリス・デヴィート編/小川公貴、金成有希共訳「ジョン・コルトレーン インタヴューズ」(シンコーミュージック)P239-240
天才たちの饗宴。
ジョン・コルトレーンとエリック・ドルフィーは何をやろうとしているのか、という質問に対するドルフィーの答はとても挑戦的だ。大事なものは刺激。それならば、彼の生み出した音楽は永遠に廃れまい。
未発表音源を含む1963年のスタジオ・セッション3枚組からの1枚“Conversations”。
文字通り「自らが楽しんでいる」のであろう”Jitterbug Waltz”に、旋律に富む”Music Matador”での、アルト・サックスの破壊的刺激。また、”Alone Together”の暗い、前衛的手法に則った個々のソロを全面的にフューチャーした阿吽のアンサンブルに感動。
・Eric Dolphy:Musical Prophet The Expanded 1963 New York Studio Sessions (1963.7.1&3録音)
Personnel
Eric Dolphy (bass clarinet, flute, alto saxophone)
Richard Davis (bass)
Eddie Khan (bass)
Clifford Jordan (soprano saxophone)
Sonny Simmons (alto saxophone)
Prince Lasha (flute)
Woody Shaw (trumpet)
Bobby Hutcherson (vibraphone)
J.C. Moses (drums)
Charles Moffett (drums)
ちなみに、本作には、未発表音源である、リチャード・デイヴィスの神韻縹緲たるベースにエリックのバス・クラリネットが泣くように淡々と絡む”Muses for Richard Davis”の2つのテイクが収録されているが、これがまた見事な出来栄え。重厚で、意味深く、骨太の音が、脳髄を圧倒する。何という音楽なのだろう。
エリック・ドルフィーのバス・クラリネットにインスパイアされ、僕はもう一つ音盤を取り出した。ヘンク・ファン・トゥイラールトのバリトン・サックスによるバッハの無伴奏組曲全曲。バリトン・サキソフォンの無限の可能性とヒューマニスティックな音色に僕は思わず感動する。
ここにあるのは呼吸だ、生命だ、魂だ。なるほど、エリック・ドルフィーの音楽が普遍的であるのは、彼の音楽が深い呼吸のもとに成り立っているからだ。
ことに素晴らしいのは第5番ハ短調BWV1011、中でもサラバンド!
愁いを帯びた音楽が、これほどまでに清澄に響く様に僕は心を動かされる。
物静かで謙虚、天使のように優しく、忍耐強い、そして皆に勇気をくれた。彼は饒舌ではない。しかし、いくつか素敵な話もしてくれた。だが、一度だけだが、彼に激怒したことがある。ヴィレッジで彼と落ち合ったときのことだった。「今日はどこから来たんだい?」と聞いたらエドガー・ヴァレーズの家に行ってきたと言う。「何だって!?どうして誘ってくれないんだよ!?」あのときは本当に失望した。でも、私をジョン・コルトレーンの家に連れて行って紹介してくれたのは彼なんだ。一緒にわざわざコルトレーンの家まで行ったのさ。
~HCD-2035ライナーノーツP37
リチャード・デイヴィスの語る、素顔のエリック・ドルフィーの人間味。
何とドルフィーにヴァレーズとの親交があったとは!
すべてが奇蹟の中にある。