出会いの数だけ別れがある、その逆も然り

当たり前のことなのだが、他人の気持ちが理解できることって大切。そういういわば「共感力」を磨くには酸いも甘いもともかく経験が必要。例えば、音楽ひとつとってみても、若い頃何気に聴いていたものが年を重ねて相応の体験の後に耳にしてみるとえらく違った印象をもつというのもそういうこと。

出会いの数だけ別れがある、その逆も然り。
The Beatlesはかつて名曲”Hello Goodbye”で次のように歌った。

You say yes I say no(君が「はい」と言うと僕は「いいえ」)
You say stop and I say go go go(君が「止まれ」と言うと僕は「行け、行け」)
Oh no(参ったな)

You say goodbye and I say hello(君が「さよなら」と言うと僕は「こんにちは」)
Hello, hello(こんにちは)
I don’t know why you say goodbye(どうして「さよなら」って言うのか僕にはわからない)
I say hello, hello, hello(僕はいつも「こんにちは」って言ってるのに)

いわゆる「すれ違い」・・・(笑)。人はみなそれぞれ異なった感性、感覚を持つ。もちろん常識も様々。生まれ育った環境や体験が違うのだから思考や感覚が違って当然。そんな相手を受け容れるにはやっぱり「共感力」が必要で、しかもその力は経験のデータベースを増やさないことにはどうにもならない。そう、成功体験だけでなく挫折体験、失敗経験も至極大事だということ。

そんなことを考えていて、人が人と上手に交流してゆくコツは、360度の観点で物事を捕え、しかも相手を決して評価せず、そのままを受け容れることなんだろうと思った(人と人とはそもそも一個であり、物理的に一緒にいようがいまいが、つながりそのものはそう簡単には絶えない)。

それと・・・、ふと30年前のことを思い出した。ちょうど今頃だったか、オフコースというバンドに周囲の女の子たちがぞっこんで、例によってその手の音楽を馬鹿にしていた僕はそういうところをあからさまに見せるものだから、逆に白い目で見られていた。でも、ある日ラジオから流れるその曲を聴いて、その音楽と小田和正のハイトーン・ヴォイスに思わず惹かれる自分もいた(要は聴かず嫌いだったってこと)。もちろん歌詞の意味など真面目に捉えていなかったし、もちろんそんな気持ちなんて微塵もわからなかった。

オスコース:さよなら

この年になって、ようやく「共感」できるようになった。これは僕にとって前進であり、ある意味進化である・・・(笑)。いや、実に名曲・・・(涙)。悲しいときに悲しい音楽を聴いて癒されるとはよく言ったもの。クラシック音楽でも、特にイタリア・オペラなどは、男女の悲恋が必ずテーマで、そうして最後には必ず主人公が死んでしまう。もちろん聴衆がハッピーエンドでないものを要求するからなのだろうが、人って他人の不幸を単に嘲笑うのでなく、共感して心を震わせたいのだろうな・・・。

プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」
ミレッラ・フレーニ(ソプラノ)
ドウェイン・クロフト(バリトン)
ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)
ジュゼッペ・タッデイ(バス)
チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ)ほか
ジェイムス・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団

プッチーニの衝撃の出世作。最初から最後までまるっきりイタリア歌劇で、いかにもお涙頂戴的なところが若い頃まったく受け付けなかったのだが、それこそ360度の視点で観て、そのままを受け容れるようになってからその「意味」がやっとわかった(つい最近のことだけど)。嬉しい目に遭って、そしてたくさん痛い目にも遭って・・・、人は大きくなってゆく・・・。
レヴァイン&メットの録音はハズレなし(歌手の選定がこれまたグッド!)。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

The Beatlesの”Hello Goodbye”って、金子みすゞの詩みたいだと思われませんか?
「逆もまた真なり」、といったところでしょうか(笑)。

『こだまでしょうか』 金子みすゞ

「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。

「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。 

「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
 
そうして、あとで
さみしくなって、
 
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
 
こだまでしょうか、
いいえ、だれでも。

オフコース『さよなら』にも、昔からとても感動します。
私は、来生たかお『夢の途中』も続けて歌いたくなります。

『夢の途中』
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお

さよならは別れの 言葉じゃなくて
再び逢うまでの 遠い約束
現在を嘆いても 胸を痛めても
ほんの夢の途中
このまま何時間でも 抱いていたいけど
ただこのまま冷たい頬を あたためたいけど・・・・・・

http://www.youtube.com/watch?v=TpelkniTBkM&feature=related

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1932438

「さよならは別れの言葉じゃなくて 再び逢うまでの 遠い約束」、ここで、私は何故か、ニーチェ「ツァラトゥストラはかく語りき」の「永劫回帰」を思い出したりもします(笑)。

ご紹介の「マノン・レスコー」は、メトの演目にぴったりですよね。おっしゃるとおり歌手も最高だと私も思います。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
確かに金子みすゞ の詩の裏返しですね。
真理はつながってますね。

ところで、「夢の途中」!!
いいですねぇ、これは。
しかし僕は薬師丸ひろ子バージョンをおすすめします(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=zMe_L5SHfhs

ああ、「セーラー服と機関銃」!良い映画でした。
何年か前に長澤まさみ主演でリメイクされましたが、あれも良かったですねぇ。
http://www.youtube.com/watch?v=DGFS8jYjzWk

>何故か、ニーチェ「ツァラトゥストラはかく語りき」の「永劫回帰」を思い出したりもします

なるほど、それもそうですね。哲学者というのは何事も難しく言いたがりますよね。来生たかおのように言ってもらえると万人に理解できます。

返信する

岡本 浩和 へ返信するコメントをキャンセル

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む