ボリショイ・バレエの「くるみ割り人形」

少し時間が空いたので、明後日の講座の準備をしようと「くるみ割り人形」を抜粋で観た。やっぱり第2幕のディヴェルティスマンから花のワルツ、グラン・パ・ド・ドゥあたりのクライマックスをご堪能いただくのが順当だろうと計画しているのだが、手持ちのDVDは30年近く前の舞台で、ピーター・ライトの演出、ロジェストヴェンスキーの指揮による英国ロイヤル・バレエのものにもかかわらず、どうもカメラ・ワークもカット割りも古臭く、興ざめなところが残念でならない。どうにも一度こうなったらどうしても拘りたい性質だから、直前だがいよいよ別の映像をこの際仕入れてみようかと思案中。
入門者にとってはそれほど大きな差ではないかもしれないが、壇上に立つ側がどうにも納得のゆかない演奏や舞台だと気持ちが入らないゆえ困りもの。

それにしても今更だが、「くるみ割り人形」の舞台の何と素敵なことよ、そしてその音楽の何と美しいことよ。「グラン・パ・ド・ドゥ」については先日ラトル&ベルリン・フィルのヴァルトビューネ・コンサートでのアンコール・シーンに痛く感動させられたが、このあたりの音楽及び情景はかのバレエにおいても圧巻で、どんなに貧しいステージを見せられても、ついつい音楽に引きこまれてしまうのだから、チャイコフスキーの才能たるは半端でないと実感する。

ところで、結局「くるみ割り」のBlu-rayを購入してしまった。
とりあえず第2幕の件の場面から観ているが、何よりメルヘンチックで、これぞ「くるみ割り」という演出(振付)が素晴らしい。それにやっぱりここはBlu-rayの威力よ。圧倒的に画質が優れているし、観ていて安心できる。

チャイコフスキー:くるみ割り人形作品71
ボリショイ・バレエ
マリー:ニーナ・カプツォーワ
くるみ割り人形/王子:アルチョム・オフチャレンコ
ドロッセルマイヤー:デニス・サーヴィン
ねずみの王様:パヴェル・ドミトリチェンコ
マリーの父:アレクセイ・ロパレヴィチ
マリーの母:オルガ・スヴォロワほか
振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
パーヴェル・クリニチェフ指揮ボリショイ劇場管弦楽団、児童合唱団(2010.12Live)

とはいえ、音楽的にはさすがにロジェストヴェンスキーの方がテンポといい解釈といい理想的(というか好み)。いかにもロシア的な土俗感と憂愁美に溢れていて、まさにバレエ音楽、チャイコフスキーの真骨頂というところ。「悲愴」交響曲とほぼ同時期に書かれた最晩年の作とは思えない飛び切りの明るさが特長だが、しかしながら、何とも言えぬ侘び寂に近い感覚を覚えるのだから面白いもの。人間は老境に至るにつれ子ども心を再び思い出すといわれるが、これは子どものためのバレエというより、何だか人生のあらゆる局面を超えてきた先達のための究極の癒し音楽のようにも見える。しばし、このバレエに浸ろうか。

王子とマリーによるグラン・パ・ド・ドゥのシーンは当然涙もの。素敵・・・。


3 COMMENTS

雅之

こんばんは。

チャイコフスキーの管弦楽のオーケストレーションの色彩感はラヴェルと双壁ですよね。

チャイコフスキーの場合、特に、ホルン、チューバ、ファゴット、バス・クラリネットなど、低い音の管楽器が効果的に使われていると感じます。

「くるみ割り」のバレエの映像ソフトについては詳しくありません。

私もいろいろと勉強してみたいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>特に、ホルン、チューバ、ファゴット、バス・クラリネットなど、低い音の管楽器が効果的に使われていると感じます。

確かにそうですね。結果、すごくバランスの良い音響効果をもたらしているんでしょうね。

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