月の子

燦々と降り注ぐ眩いばかりの太陽の光を浴びると、生きているという実感が湧く。過去の記憶に囚われることなく今を生きるには、過去そのものを徹底的に掘り下げて、体験したすべてを受け容れる必要がある。そう、酸いも甘いもとことん味わってしまえということだ。一見矛盾するような言及だが、人が本質的に変わらないという観点に立てばこのことは自ずと理解できよう。

地球から最も距離が遠いという満月の日に、煌々と輝くお月様をバックに自分の未来を信じ抜くことの大切さを想った。

浄化の夜、独り音盤と対峙し、母なる地球と大いなる宇宙に思いを馳せる。

King Crimsonの4oth Anniversary Seriesはやっぱり見逃せない。どんなに売り手側の販売戦略に踊らされているとわかっていても、真新しいボーナス・トラックや映像が収録されているとなると放っておけない。それが好きなアーティストへの「愛」というものなのだろうか(笑)。例えば、リマスターや紙ジャケがリリースされるたびに購入してしまう「宮殿」。今回のものには1969年、オリジナル・クリムゾンによるハイド・パークでの”Schizoid Man”の映像の一部が収録されているのがミソ。若き日のGreg Lakeの熱唱、そしてIan McDonaldの絶妙なサックス・プレイがわずかな時間だが堪能できる・・・。うーん、やっぱり過去に囚われているなぁ・・・(苦笑)。

King Crimson:In The Court Of The Crimson King(40th Anniversary Series)

今更ながらだが、このアルバムの構成は最高の宇宙讃歌であると確信する。”I Talk To The Wind”の切ない抒情性。”Epitaph”の荘厳な鳴動。そして、アナログ盤ならB面になる”Moon Child”!!後半のインプロヴィゼーション・パートこそCrimsonという不世出のバンドの方向性を決定づける現代音楽さながらの傑作だと僕は思う。

Call her moonchild
Dancing in the shallows of a river
Lonely moonchild
Dreaming in the shadow
Of the willow

「月の子」と呼ばれるあの娘が
川の浅瀬で踊っている
ひとりぼっちの「月の子」が
柳の木陰で夢見ている。

嗚呼、何という浄化・・・!!!
余計な思考を捨ててしまって、ただここにありたい。


6 COMMENTS

岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
月の神秘性に目覚めたことと、宇宙までをも征服したいという人類の欲望が並行して露わになった時代ですよね。
やっぱり1960年代~70年代初頭は魅力的な時代です。
ご紹介の「ザ・ムーン」、興味深いですね。観てみたいと思います。
ありがとうございます。

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » 時よとまれ、お前は美しい!

[…] 1曲目”Steps – What Was”は14分弱という大曲。ドラム・ソロあり、ベース・ソロあり、極めてバランスが取れ、調和性豊かな音楽が鳴り続ける。タイトル曲”Now He Sings – Now He Sobs”の静かなる挑発!あるいはラストの”The Law Of Falling And Catching Up”のアバンギャルド!(まるでプリペアード・ピアノを扱っているよう!楽想はKing Crimsonのファースト・アルバムの”Moon Child”後半部を想起させるもの。素敵だ) […]

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » King Crimson “Lizard”

[…] 歴代キング・クリムゾンの全アルバムの中で最も聴く回数の少ないアルバムがおそらく3枚目の「リザード」。始めて購入したのは30年近く前。もちろんアナログ盤だったが、その頃から「宮殿」や「ポセイドン」、あるいは「アイランド」などは繰り返し頻繁にプレーヤーに載せるのに、この作品だけはどうにも食指が動かなかった。 それは今でも変わらない。久しぶりに思い出したように聴いてみても、正直面白いと思えない。いや、音楽的には多分面白いところもあるのだけれど、キング・クリムゾンとして聴いたときのインパクトがあまりに薄い点が評価を下げる。 そういえば、ロバート・フリップはいくつかコンピレーション・アルバム、いわゆるベスト盤をリリースしているが、この「リザード」からの楽曲は1曲も入れたことがないんじゃないか・・・(ライブでも演奏してないんじゃないかな・・・どうだろう?)。そもそも主宰する人間が葬り去るような作品群ゆえいくらクリムゾン・フリークと雖もなかなかエッセンスを汲み取るのは難しい。 […]

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » Epitaph Officail Bootleg 1969

[…] オリジナル・キング・クリムゾンのデビュー当時の音源をいろいろと聴き込んで感じた。このバンドは生まれた時から既に完成形を示しており、あの「宮殿」というアルバムはあくまで彼らを世界的に認知させるための手段のひとつであって、ライヴ演奏こそが各々のメンバーにとって重要な要素だったんだということをあらためて認識した。 15年ほど前にリリースされた「エピタフ~1969年の追憶~」という2枚組セットにはBBCセッションをはじめとして当時のフィルモアでの演奏が、最良の音ではないにせよ聴きごたえ十分の優れた音質で記録されており、もうこれだけでお腹いっぱいになるほどの充足感が味わえる。おそらく当時のファンは1度彼らのギグを聴いてそのあまりのエネルギーに卒倒しながら、また聴いてみたいという欲望に駆られ何度も彼らのライブに通う、そんな麻薬のようなセッションが繰り広げられたのだろう(当時のセットのラスト・ナンバーである”Mars”はホルストの音楽自体がそういう要素を秘めているにせよ、どうにも魔術的な雰囲気に溢れ、ここに辿り着いた時点ですでに聴衆も疲労困憊しているのでは?)。 […]

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む