ベルダー指揮ムジカ・アンフィオンのテレマン ターフェルムジーク(2003録音)ほかを聴いて思ふ

マイケル・ジャクソンが急逝して早9年。時の経過はあっという間。僕は彼の熱心な聴き手ではなかったけれど、残された楽曲のどれもが永遠を刻む、人々の心を癒すものだと今さらながら思う。

何が欲しかったのか本当のところはもちろん不明だが人類の1パーセントから2パーセントの間くらいの人間がマイケル・ジャクソンに音楽やダンスをまだ望んでいたことは確かなようだ。マイケル・ジャクソンの作りだした音楽は人類の1パーセントから3パーセントの間ぐらいの人間にとってなぐさめや喜びとして現在も有効なものだ。マイケルを消費し続ける多くの人々にとってもはやマイケルの新しい音楽活動は疑心暗鬼の対象でしかないと思うのはマイケルの音楽をどうでもいいものと考えることしかできない人々のスノビッシュな性癖の証なのかもしれない。しかしマイケルは世界の様々な場所で世界的に有名ですごく踊りの上手な人として尊ばれ続けていることを当然の事と納得していたのかどうか、人類の2パーセントほどの人々は疑問を抱いていたのではないか。
(湯浅学「マイケルは人類に何を伝えたのか」)
「現代思想2009年8月臨時増刊総特集マイケル・ジャクソン」(青土社)P70

湯浅学さんの疑問は、とても的を射ていると思う。彼の指摘通り、マイケルの奇行は、自身と世界の間に、人気が出るほど大きくなった乖離や矛盾を相殺するべき行動であったのだろうか。湯浅さんは「マイケルにとって安住の地とは、何もない無色の世界だったか」という言葉で締めるが、果たしてマイケルが死によって無色の世界を獲得できたのかどうなのかはわからない。彼はもっともっとこの世で活動し、子どもたちに、人々に奉仕したかっただろうから。

・Michael Jackson:HIStory Past, Present and Future Book 1 (1995)

1枚目はベスト盤、2枚目はオリジナル盤というセット。タイトル通り、ここには過去も未来も包含した現在があった。マイケルが遺した普遍的な、人類の至宝たる数多の作品を聴きながら、彼はやっぱり幸せだったのだろうと思った。そしてまた、永遠に彼の優れた音楽を享受できる僕たち人類はもっと幸せだ。

健康な子どもたち、病気の子どもたち、また亡くなった子どもたち、世界中の子どもたちに捧ぐ。僕は君たちを心から愛します。このアルバムは君たちの愛とサポートがなければ生み出せなかったでしょう。いつまでもずっと君たちを愛します。
愛を込めて、マイケル・ジャクソン

251年前の今日、ゲオルク・フィリップ・テレマンが66歳の生涯を閉じた。生前、同時代のバッハやヘンデル以上に人気を博したといわれるテレマンの音楽は、マイケルに負けず劣らず自然体でポップだ。

何しろ受難曲46曲、教会カンタータ1,000曲以上、オペラ20曲以上、室内楽200曲以上、協奏曲100曲以上、管弦楽曲130曲以上と凄まじい数の作品を遺している作曲家テレマンである。傑作を挙げだしたらキリがない。また何かを代表作に挙げてもすぐに異論を差し挟まれそうだ。当然の事ながら、そうした作曲の依頼が来たから作品を書いたのであり、またそれらの質が高いからそうした要望が相次いだのである。
「古楽CD100ガイド—グレゴリオ聖歌からバロックまで」(国書刊行会)P77

当時の王侯貴族が食事時のバックグラウンド音楽として委嘱した「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」。3集からなる、多様な編成の、美しくも軽快な音楽は、1733年の出版に際し、ヨーロッパ中から予約が殺到したというのだから凄い。

テレマン:ターフェルムジーク(食卓の音楽)第1部
・序曲(2つのフルート、弦楽器と通奏低音のための組曲)ホ短調TWV55:e1
・フルート、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のための四重奏曲ト長調TWV43:G2
・フルート、ヴァイオリン、チェロ、弦楽器と通奏低音のための協奏曲イ長調TWV53:A2
・2つのヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ変ホ長調TWV42:Es1
・フルートと通奏低音のためのソナタロ短調TWV41:h4
・2つのフルート、弦楽器と通奏低音のためのシンフォニアホ短調(終結部)TWV50:5
ピーター=ヤン・ベルダー指揮ムジカ・アンフィオン(2003録音)

繊細で優しい音。
ムジカ・アンフィオンの奏でる音楽は、僕たちの心を癒す。殊に、フラウト・トラヴェルソのふくよかな音色が悲しく響く。

可憐なる小さき歌よ、
わが喜びのあかしよ。
あわれ、きょうこの頃の春の時
行きては帰ることあらじ。
「わが歌に」
高橋健二訳「ゲーテ詩集」(新潮文庫)P18

ムジカ・アンフィオンの巧さ。想いに溢れた音楽は何だかあまりに切ない。

 

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