忌野清志郎&高橋アキの「ぞうのババール」

数年前、忌野清志郎さんが亡くなった時、追悼の意味も込めてどうしても聴きたい音盤があった。バブルの頃、リリースされた時からの愛聴盤で、音楽物語となっていたその作品は最高の出来で、当時友人たちに、誕生日やお祝いや、ことあるごとにプレゼントさせていただいていた、そういう代物だった。ところが、どういうわけか、そんなこんなで僕の手元には1枚もない状態で、しばらくすると廃盤になったものだから、以来聴く術がまったくなかった。
で、清志郎さんが亡くなってふとその録音の存在を久しぶりに思い出し、「どうしても・・・」という気になったのだけれど、その時はもうどうしようもなかった。(やっぱりいつ何時聴きたくなるかわからないから不要なような音盤も手元に置いておくべきだなと確信した。ゆえに映像含めた音盤は明らかにもう何年も聴いていないのに捨てることもできない売ることもできないという状態が続く・・・苦笑)

先月、”Music Door Academic”に出演させていただいた折、そこでドビュッシーの「子供の領分」が谷川俊太郎さんの書き下ろしの詩の朗読付だということで、朗読を担当された仙波知司さんと面識を得た。そしてそのお蔭で何とその音盤がついに手に入った。畏れ多くも仙波さんは元東芝EMIの敏腕プロデューサーで、しかもその音盤をプロデュースされた当人だということ。どこでどんな風に人と人とがつながるのかはわからないもの。当時の音盤にまつわる思い出をお話しさせていただいたところ、数日後に贈っていただけたというわけだ。真にありがとうございます。

それは、来年没後50年となるフランシス・プーランクがジャン・ド・ブリュノフの物語に音楽をつけ、それを矢川澄子さんが日本語訳したものを忌野さんが朗読し、高橋アキさんがピアノを弾くという、なんとも贅沢な企画。一聴、25年近く前のあの頃を思い出し、ひっくり返りそうになった(笑)。

ジャン・ド・ブリュノフ作
フランシス・プーランク作曲
矢川澄子訳
音楽物語 ぞうのババール
語り:忌野清志郎
ピアノ:高橋アキ

嗚呼、懐かしい。
夢にまで見た録音。
清志郎さんにとって声優というのはこのときが初めてだったらしく、ステージではあれだけの大パフォーマンスをする人でも、だいぶに緊張されたらしい。確かにこの朗読を聴くと多少のぎこちなさを感じなくもない。当時の彼は37歳で、子どももできたばっかり・・・、何だかその初々しさが余計にこの物語の価値を高めているようで興味深い。
ちなみに、高橋アキさんは現代音楽の旗手だけあり、その研ぎ澄まされた音の響きと律動が特長だけれど、このプーランクに関しては不思議な「癒し感」を醸し出しており、そこが本当に素晴らしい。

ところで、3年ほど前にジャンヌ・モローの朗読、ジャン=マルク・ルイサダのピアノで録音された「ババール」を採り上げているが、その時の記事を読むと、
「人間世界の優位性を暗に謳っているところが何だか傲慢に思えて、僕はあまり好きじゃない」と書いている。
自分で書いておきながら、どうしてこういう表現になったのかまったく記憶がない。
昔からそうだし、今もむしろ好きなんだけれど・・・(苦笑)。
やっぱり行き当たりばったりで書いているからか・・・。どうにも無責任なブログだということが暴露された(爆)。


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