久しぶりにクナッパーツブッシュ&ウィーン・フィルによるワーグナーを聴いた。それもモノラルの旧い方を。高校時代に繰り返し聴いて悦に浸っていた音盤。もちろん当時はアナログ・レコード。おそらくそれが僕のほぼ最初のワーグナー体験だと思う。
これまでいろいろワーグナーを聴いてきたが、最終的にはクナッパーツブッシュに戻る。実演を聴くことはできなかったが、やっぱり唯一無二のワーグナー指揮者だと思うから。
今週末、ロリン・マゼールがNHK交響楽団を振り、自身が編曲した「言葉のない『指環』」を披露する。あの管弦楽曲版「指環」は、20年前にテラークからリリースされて以来の愛聴盤だが、それを実演で聴けるチャンスが到来するのである。しかしながら、会場がNHKホール・・・。サントリーホールならば間違いなくチケット即ゲットだが、どうもNHKホールだと二の足を踏む。
だったらテレビで観た方がましだと。
ちょうど来日の演目に合せたのかどうなのか、10数年前のベルリン・フィルとの「言葉のない『指環』」の映像が1,000円ほどで店頭に並んでいるから、それを観た方が余程伝わり、感動するのではと。
実際、2度ほどこのBDを鑑賞したが、4夜にわたる大スペクタクルの良いとこどりでまとめられている70分ほどの交響詩に涙が出るほど感動した。ほぼ半分ほどの時間が費やされる「神々の黄昏」にクライマックスの照準が当てられているが、「ラインの黄金」前奏曲から始まる前半部も最初からこういう造りなのだったのではないかと思われるくらい見事(アレンジとはいえ、ワーグナーの音楽から何も足さず何も引かず、真に彼の創った音だけで構成したとマゼール自身が語っているので、ほとんどワーグナー自身が編集した交響詩だと言っても良いかも)。
ということで、正直残念ではあるが、NHKホールでの「言葉のない『指環』」は見送る予定。
お疲れモードで、今宵はクナのワーグナー。
「マイスタージンガー」も「オランダ人」も意外に大人しい。ウィーン・フィルとのワーグナー録音は後年のミュンヘン・フィルとのものに比べ、いずれもそういう傾向が強いが、打楽器の打ち込みや金管の咆哮はやっぱりクナッパーツブッシュその人だし、例えば「ワルキューレの騎行」におけるコーダの「魔法」は彼以外にはあり得ない。
クナッパーツブッシュにとって聴衆の存在などどうでも良かったとよくいわれるけれど、本当はサービス精神旺盛な人ではなかったのか。何だか、芯の優しさを感じる、そんな演奏だとあらためての印象。
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