愛国心を持つなら地球に持て

若い頃、ジミ・ヘンドリクスについてはあまり聴き込まなかった。初めてその音楽に接したのはご多聞にもれず映画「ウッドストック」における例の雄姿を通じて。20歳やそこらの年齢だったことと基本クラシック音楽かぶれだったこともあり、正直あまりよくわからなかった。
ジミ・ヘンドリクスは1942年11月27日生まれということだから生きていれば間もなく70歳の誕生日を迎える年齢だったということだ。70歳のジョン・レノンというのも全く想像つかないが、70歳のジミヘンというのは一層イメージし難い。
あまりに土臭いというのか、そしてその音の厚みや重みによって「今」聴いても一度でノックアウトされるようなエネルギーを放出するが、これこそライブで聴いてみたかった・・・。

昨年菊地成孔+大谷能生の「マイルス」研究を読んで、マイルス・デイヴィスとジミ・ヘンドリクスの共演の企画があったことを知り、驚いた。かの帝王もジミに傾倒していたとは。ジミヘンの急逝によりその話は頓挫してしまったらしいが、もしもそんな録音が残されていたらどんなだったのだろう?いや、ジミが生きていたら現在の音楽地図はどんな風に変わっていたのだろう?そんなことを考えながら、彼の残された数少ない音源を聴いた。何だかようやくジミ・ヘンドリクスの「偉大さ」がわかったような気がした。

そのことは、後年彼の作品をどれだけ多くのアーティストがカヴァーしたかが証明する。そしてジミヘンの奏法や音楽スタイルに影響を受けたロッカーがどれほどいたことか。
20年ほど前リリースされた、おそらくトリビュートものの嚆矢であろう音盤を久しぶりに聴いた。燦然と輝きを放つ爆音が夜の静けさと対比せられる。

A Tribute To Jimi Hendrix
The Cure / Purple Haze
Eric Clapton / Stone Free
Spin Doctors / Spanish Castle Music
Buddy Guy / Hey Joe
Seal and Jeff Beck / Manic Depression
Nigel Kennedy / Fire
Pretenders / Bold As Love
P.M. Dawn / You Got Me Floatin’
Slash and Paul Rodgers with the Band Of Gypsys / I Don’t Live Today
Belly / Are You Experienced?
Living Colour / Crosstown Traffic
Pat Metheny / Third Stone From The Sun
M.A.C.C. / Hey Baby (Land Of The New Rising Sun)

The Cureの演奏する”Purple Haze”(インスト!)のかっこ良いこと!それにBody Countの”Hey Joe”!!Pretendersの”Bold As Love”も涙もの。嗚呼、Nigel Kennedyの”Fire”にはジミヘンの魂が乗り移る。

ジミ・ヘンドリクスは言う、「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理させるな!」と。真に彼らしい言葉。これほど大局観で的を射た思想があろうか。27歳にして亡くならざるを得なかった理由がわかるというもの。

マイルス同様ギル・エヴァンスもジミヘンの音楽を高く評価していた。スティングがカヴァーした”Little Wing”のアレンジはギルのほぼ最後の仕事である。


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