Foreigner “Double Vision” (1978)

本棚から徐に書籍を取り出して適当に頁を広げてみると、そこから実に的確なヒントが得られるものだ。偶々僕はフォリナーを聴いていた。イアン・マクドナルドがいまだ創造力を武器に、新たな自分の居場所を創らんと血気盛んにバンドを盛り上げようとしていた頃のアルバムだ。

・Foreigner:Double Vision (1978)

Personnel
Lou Gramm (lead vocals, percussion)
Mick Jones (lead guitar, backing vocals, acoustic piano, lead vocals)
Ian McDonald (guitars, keyboards, reeds, vocals)
Al Greenwood (keyboards)
Ed Gagliardi (bass, vocals)
Dennis Elliott (drums)

しかし、彼は3枚のスタジオ・アルバムを残して結局去ってしまった。
リーダーたらんとしてもリーダーにあらず(職人イアンには、いわゆるフォロワーシップというものも欠如していたのかもしれない)。残念ながらアルバムの制作を重ねるごとに、それはイアンが求めた音楽性とはかけ離れたものになっていった。

無人島にひとりで暮らすなら、リーダーシップがなくても問題はない。2人でも、互いの相性がぴったりならやっていけるだろう。場合によっては、さらに豊かな暮らしを営むこともできるかもしれない。しかし3人以上になったら、誰かがリーダーシップをとらなければならない。そうでなければ、混乱が噴出する。
ウォレン・ベニス/伊東奈美子訳「リーダーになる」(増補改訂版)(海と月社)P54

どんな世界でも人が2人以上集まり、組織となればリーダーシップ、あるいはフォロワーシップの問題が起こる。個性と個性がぶつかり合うのである。

変革への第一歩は、他人に動かされることを拒み、人生の舵を自分の手に取り戻すことだ。リーダーへの道は、こうして始まる。
~同上書P86

自律性を取り戻すには、自信と勇気が要る。勇気は思いやりから生まれるものだが、勇気と思いやりの掛け算こそが真の利他なのだと僕は思う。

著者はいう。マネージャーではなく、リーダーになれと。管理するのがマネージャーなら、改革するのがリーダーだ。それには自分で自分を作り上げねばならない。
第一は、自分を知ること。

子ども時代の経験や家族、仲間などが、今の自分にどんな影響を与えているのかを理解する必要がある。人間というのは、自分のことはなかなかわからないものだ。
~同上書P116

第二は、世界を知ること。自分の枠を広げ、人の輪を広げ、人生の師を持てと。そして、逆境にこそ学びがあるのだと言うのだ。首肯。

自分の直感的衝動を信じれば、間違いをおかすことはあっても必ず成長する。ときには衝動を信じたことで才能が開花することもある。
~同上書P159-160

確かに直感に優るものはないだろう。しかし、個人プレイではだめだ。メンバーとの絆をいかに固く保持するか。それには何が重要か。

私はメンバーが競いあう状況をつくらないことが重要だと思っています。
~同上書P239

ちなみに、信頼を生み、それを維持するリーダーには、4つの要素が備わっているそうだ。すなわち、一貫性、言行一致、頼りがい、そして誠実さ。首肯。

とくに現代のような変化の激しい時代には、リーダーが明快な針路をとり、そこからぶれないことがとても重要になる。
~同上書P246

個性派揃いのロック・バンドというもの、大抵メンバー同士は競い合っているものだ。信頼を生み、それを維持できるカリスマなどなかなかいまい。だからこそ一瞬の輝きがあればそれで良いのだ。

イアン・マクドナルド在籍時の初期フォリナーはやはり素晴らしい。イアン作の”Love Has Taken Its Toll”のポップだけれどどこか渋さをあわせ持つ音楽の妙。そして何よりキング・クリムゾン(90年代クリムゾンの”VROOOM”、あるいは”Red”)を髣髴とさせるインストゥルメンタル・ナンバー”Tramontane”のカッコよさ(偶然なのか意図的なのか”VROOOM”は”Tramontane”をなぞっているように僕には聴こえる)。イアンの創造力は偉大だ。

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