シルヴェストリのショスタコーヴィチ

第4楽章のテンポについてシルヴェストリ曰く、「楽譜の速度表示が誤りであることは作曲者から聞いた。私のテンポが正しい」。
指揮者本人の言葉を記して、例によって仙波知司さんからまたしても音盤をいただいた。「他の演奏で馴染んだ耳には吃驚されると思いますが。お楽しみください」という結びの言葉付で(ついでに1975年までショスタコーヴィチは生きていたわけだからその話が広まらないのはおかしいという注釈も。確かに。シルヴェストリの言葉はどこまで正確なのだろうか・・・)。
話題のコンスタンティン・シルヴェストリによるショスタコーヴィチの第5交響曲。
見事な爆演。これこそ一期一会のショスタコーヴィチ。第1楽章冒頭の低弦の主題提示から釘づけ。強烈なテンポの揺れ。にもかかわらず全くの不自然さなしに最後まで聴かせてしまう技。驚きの連続。アダージョ楽章は深々とした響きで始まり、何とも不気味に進行してゆく。そして、頂点での何という阿鼻叫喚!
いよいよ問題のフィナーレ。冒頭のアップテンポがそのまま維持されるのか(あるいは強烈なアッチェレランドでオケが崩壊寸前なのか)と思いきや、コーダではムラヴィンスキーなどと同様にテンポを落とし重厚に締めくくる。僕の勝手な想像ではコーダのスピードがバーンスタイン以上なのではと期待していたものだから(バーンスタインの快速テンポには違和感があり決して好きではないのだけれど、てっきりそういう凄演なのだろうと思い込んでいた)正直に書くと若干拍子抜け。しかしながら、大変な名演奏には違いない。今までこういうものをスルーしていたとは、と反省することしきり。仙波さん、ありがとうございます。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47
ハチャトゥリアン:バレエ組曲「ガイーヌ」
・ばらの少女たちの踊り
・子守歌
・剣の舞
プロコフィエフ:組曲「3つのオレンジへの恋」作品33a
・おどけもの
・地獄の場面
・行進曲
・スケルツォ
・王子と王女
・逃亡
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1962録音)

たとえショスタコーヴィチでも今更もう第5交響曲でもないだろうと思っていたけれど、久しぶりに耳にしてとことん感動した。もちろんシルヴェストリの解釈に度肝を抜かれたというのも大きいが、やっぱり楽曲の構成、出来が抜群なのである。それはチャイコフスキーの第5交響曲などと同様。どんなに通俗的になろうとこういう音楽は人の魂を鼓舞する波動に満ちている。
ハチャトゥリアンもプロコフィエフも粘り、うねる。強烈な破壊力!
「3つのオレンジへの恋」などもこれまで聴いていたどの演奏よりも個性的。ソビエト音楽の面白さをあらためて知らしめられる、そんな感じ。これはしばらく虜になりそうだ・・・。


5 COMMENTS

アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » コンスタンティン・シルヴェストリ15枚組ボックスより

[…] コンスタンティン・シルヴェストリの15枚組ボックス・セットが届いた。1969年にわずか55歳で亡くなったこの指揮者についてはほんの最近まで無関心だった。ほとんど無視していたと言っても言い過ぎではない。ところが、チャイコフスキーの第5交響曲を聴いてみろとふみ君から手渡され、いきなりジャブを浴びせられた。その後すぐに仙波知司さんから今度はショスタコーヴィチの第5交響曲を贈っていただきノックアウト。心底驚いた。 言葉で言い表せない怪演がそこにはあった。「怪演」とはすなわち超名演奏になる可能性もあり、超駄演に陥る可能性も秘める演奏。とはいえ、シルヴェストリの場合、どんな演奏になろうと実に面白い。まさに一期一会。1枚ずつ丁寧にじっくりと聴いていくことにしようか。 […]

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でれすけ

同感です。たったいま、その音源を聴いていたばかりです。たしかにいまさらショスタコーヴィチの5番か、という感じもしますが、久しぶりに聴いてみるとびっくり!ウィーンフィル絶頂期の演奏であることもあり、すばらしい演奏ですね!ハチャトゥリアンもプロコフィエフもおっしゃるとおりすばらしいですね。わたしはこの音源は、二十数年前、まだCDというものが珍しかった時代から持っており、じつはショスタコーヴィチ5番を初めて聴いた演奏はこれです。その後、オケは必ずしもウィーンフィルではないですが、シルヴェストリ指揮で、チャイコフスキーの悲愴、ドヴォルザーク7番および8番、ショスタコーヴィチの10番などを聴き、感動しております。通りすがりに失礼しました。

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岡本 浩和

>でれすけ様
コメントをありがとうございます。
そうですか!20年以上も前からお聴きになっていたのですね。
初めて聴いた時は卒倒しました。
シルヴェストリは素晴らしい指揮者だと思います。

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