立春にニック・ドレイク

大学時代の一時期、当時流行の洋楽を随分聴いた。ただ、その行為はあの時期に集中していたもので、いわゆる「ベスト・ヒットもの」はせいぜい80年代でストップしている。気に入った楽曲はたくさんあった。このところのシューマン詣ででつながったのが、The Dream Academyの”Life In A Northern Town”。今聴いても「名曲」だと僕は思う。

They sat on the stoney ground
And he took out a cigarette out
And everyone else came down to listen.
He said “In winter 1963
It felt like the world would freeze
With John F. Kennedy
And The Beatles.”

なぜこの曲なのか?「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないけれど、”Life In A Northern Town”という作品はNick Drakeに捧げられているから。

ニック・ドレイクは知る人ぞ知る(?)英国のシンガーソングライター。1974年に抗鬱剤の多量接種で26歳にして命を落としている(それが自殺か事故なのかはわからないらしい)。わずか3枚のアルバムを残して逝ってしまったこの吟遊詩人は、作風が重いながら実に爽やかな側面も持っており、シューマンを聴き込むうちにどこか「共通性」を感じ(若干無理矢理感はあるけれど・・・笑)、突然思い出したのである。

セカンド・アルバム「ブライター・レイター」は「春」を思わせる。そう、精神不安定を抱えるロベルト・シューマンがクララ・ヴィークとの結婚によって最も安定していた、心身共に絶頂期であっただろう時期に生み出した作品と通ずるものを僕は感じる。このアルバムはニックにとっても自信作だった。しかしながら、評論家諸氏は彼の天才を認め、その創造物についても絶賛したものの、一般の人々からはまったく顧みられることはなかった。彼の鬱病は、この事実によって一層深刻なものになってゆく。そう、「引き金」になったということだ。

Nick Drake:Bryter Layter

Personnel
Nick Drake (vocals and guitar)
Richard Thompson (lead guitar)
Dave Pegg (bass)
Ed Carter (bass)
Dave Mattacks (drums)
Mike Kowalski (drums)
Paul Harris (piano)
Chris McGregor (piano)
Lyn Dobson (flute)
John Cale (viola, harpsichord, piano, celeste and organ)
Ray Warleigh (alto sax)
Pat Arnold and Doris Troy (backing vocals)

今もってこのアルバムはニック・ドレイクの「春」である。くぐもった暗澹たる雰囲気を内側に秘めながら、明朗で快活で、幸福感に満ちる瞬間が多々聴こえる。

“Northern Sky”
I’ve been a long time that I’m waiting
Been a long time that I’m blown
I’ve been a long time that I’ve wondered
Through the people I have known
Oh, if you would and you could
Straighten my new mind’s eye.

とはいえ、音楽はそれなりに明るいけれど(明るいか?笑)、さすがに詞は暗い・・・。
特筆すべきはヴェルヴェッツ脱退後ソロ活動を始めたジョン・ケイルがチェレスタを弾き、ピアノやオルガンを操っていること(そういえば、90年にルー・リードと来日公演をした際、アンコールでピアノを弾きつつ”Pale Blue Eyes”を歌いはじめた時の驚きと感動(Louの歌をJohnが歌ったのだ!)。何だかジョンの弾く楽器の音って優しいんだ・・・)。

もうひとつ”Fly”。こっちではジョンがヴィオラとハープシコードを演奏!!


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