
ルチアーノ・ベリオは音楽のジャンルの是非を問わなかったそうだ。
例えばベリオは、音楽にはさまざまなものがあり、それ以上でも以下でもないと考えていた。ビートルズが好きだった彼が、一方ではああいった音楽を書いていたんだ。そしてある日、《フォーク・ソングス》(64)を書いた。何が悪い? 彼はまったく恥じることはなかった。ベリオは、「これは良し、それは駄目」と確信をもって言うモラリスト的な考えを持っていなかったんだ。
(ルイス・バカロフの証言)
~エンニオ・モリコーネ/アレッサンドロ・デ・ローザ著 石田聖子/岡部源蔵訳 小沼純一解説「あの音を求めて モリコーネ、音楽・映画・人生を語る」(フィルムアート社)P429
陰陽を超えた心眼による音楽の目利きともいうのか、僕はとても納得した。
キャシー・バーベリアンの歌う「フォーク・ソングス」を聴いて、とても感動した。
ベリオといえば、とっつきにくい現代音楽の旗手たる印象しかなかったものだから余計に心が動いた。その上での、上記の言葉である。
何にせよ創造という行為が神秘的なのだと僕は思う。
ベリオはビートルズを愛し、ビートルズがいまだコンサート活動をしていた時期に「フォーク・ソングス」を書いた。
The Beatles / 1962-1966 (Remaster) (2010)
昔は、こういう編集版はナンセンスだと思っていた。
でも、よく考えると、ビートルズの歴史、変遷を短時間で振り返ることを考えたら当然ありで、最近はこれで十分楽しませていただいている。
しかしながら、従来のアナログ盤そのままの装丁でCD復刻しているものだから1枚の収録時間が30分ほどで、これは辛い。例えばSACDフォーマットなどを使用して、赤盤&青盤を1枚に収録するということができなかったものなのかどうなのか(売る側の戦略としてはもちろんなしだろうが。いや、今は音盤など所有せずともいくらでも音楽は享受できるのでそんなことを考える輩はほとんどいないか・・・)。
技術の進歩と共に世界は大きく変化する。
同時に、古いものが逆に持て囃されることもよくあること。
今はアナログ・レコードの復権が騒がれているが、確かにビートルズなんかはレコードで聴いた方が良い音がして、心地良いかも(懐古趣味なんかではない)。僕たちが過去に置き忘れてしまった大事なことはたくさんある。