物質世界に生きること

栃木県のある町を訪れた。JRと東武東上線を乗り継いで2時間弱。途中、乗り換えのため駅で10数分待ちながら感じたこと。
「なんて長閑なんだろう!」
時間の経過が普段の倍にも感じられる・・・。東京で生活していると何から何までが慌ただしい。人のスピードではまったく追いつけないような速さで、テンポがのんびりしている人間から言わせると無理やり生き急いでいるような感覚であることをあらためて確認した。美味しい空気と、広々とした大地。行き交う人もほとんどなく、車もちらほら。惚けてしまうような雰囲気と言うなかれ。これこそ人間らしさを保てる場なり。

レノン=マッカートニーの陰に隠れながらも、体と心にすこぶる優しい音楽を残したジョージ・ハリスン。ビートルズ時代よりインド哲学に興味を持ち、様々なアーティストに影響を与えた孤高のミュージシャン。田舎道を歩くと必然的に彼の作品が思い出される。

George Harrison:Living In The Material World

夢見るような精神世界に生きたジョージの、1973年の知る人ぞ知る傑作(だと僕は思う)。いかにも逆説的なタイトル・ソング(ポールとリンゴが参加!)には、唯物主義への自戒の念が込められている。ある意味、今こそもっと聴かれるべきアルバムではないのか、そんなことを思いながら聴いた。
時は1:19。真夜中に小音量で聴くにとても相応しい歌声。
自然というものを賛美したジョージは、癌に侵されて58歳という年齢で逝ってしまった。あまりにも若過ぎる死だが、物質主義に対して疑念を抱いていた彼にとってはきっと本望だったに違いないと思われる。
実にジョージ・ハリスンこそベートーヴェンの生まれ変わりではないのか。The Beatles時代のカバー・ソング、”Roll Over Beethoven”を思いながらそんなことを思った。

ベートーヴェンなんてくだらない
ベートーヴェンなんて問題外
リズム&ブルースが一番さ

いかにも自虐的。そこには楽聖に対する劣等感あり(笑)。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>栃木県のある町を訪れた。JRと東武東上線を乗り継いで2時間弱。

いいですねぇ、鉄道の旅。季節も最高ですし・・・。
でも、昨日のニュースが、私の気持ちをまた沈ませます。

〈栃木産の生茶葉からセシウム、出荷自粛要請〉
読売新聞 5月19日(木)20時44分配信

 栃木県は19日、鹿沼市と大田原市で17日に採取した生茶葉から、暫定規制値(1キロ・グラムあたり500ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出されたため、両市に今年産の茶葉の出荷自粛を要請した、と発表した。
 鹿沼市の生茶葉から890ベクレル、大田原市の生茶葉からは520ベクレルの放射性セシウムが検出された。県によると、今年産の茶葉はまだ出荷されていない。県内産茶葉の収穫量(2009年)は約55トンで全国34位。・・・・・・

家にいても、Blu-ray Discで、ただぼーっと鉄道の美しい前面展望映像を眺めて癒されることが、このごろ多いです(ビコムによるこのシリーズ、気が付いたら、もう10作品ほど所有しています)。

のんびりとしたローカル線の旅は、やはりいいですね。
先日は、福島県のきれいな景色を満喫したくなりました。

只見線 会津若松~小出(Blu-ray Disc)
http://www.amazon.co.jp/%E5%8F%AA%E8%A6%8B%E7%B7%9A-%E4%BC%9A%E6%B4%A5%E8%8B%A5%E6%9D%BE~%E5%B0%8F%E5%87%BA-Blu-ray-Disc-%E3%83%93%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%A4%E5%B1%95%E6%9C%9B/dp/B002ZAUH24/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1305840157&sr=1-1

岡本さんは、新幹線「0系」と同い年の1964年。

0の記憶~夢の超特急0系新幹線・最後の記録~ ドキュメント&前面展望(Blu-ray Disc)
http://www.amazon.co.jp/0%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6~%E5%A4%A2%E3%81%AE%E8%B6%85%E7%89%B9%E6%80%A50%E7%B3%BB%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A%E3%83%BB%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2~-%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-%E5%89%8D%E9%9D%A2%E5%B1%95%E6%9C%9B-Blu-ray-%E6%83%B3%E3%81%84%E5%87%BA%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%88%97%E8%BB%8A%E3%81%9F%E3%81%A1BD/dp/B001PRHTQA/ref=sr_1_2?s=dvd&ie=UTF8&qid=1305840200&sr=1-2

時速220 km! さすがに速い。ただ、私が楽しめるスピードはこのくらいが限度。
「N700系」の270~300 kmは、私には速過ぎます。
……………………………………………………………………………….

テーマ館・総合プロデューサー 岡本太郎
(大阪)万博のテーマ「人類と進歩と調和」スピーチ (1970年)

はじめにわたしはこの万博のテーマに反対である。
人類と進歩と調和、なんてクソくらえだ。
人類は進歩なんかしていない。
確かに宇宙へ行く科学技術が発達したが
肝心の宇宙を感じる精神が失われてるじゃないか。

それに調和といったって、
日本の常識で言えば、お互いが譲り合うということだろ。
すこしづつ自分を殺して
譲り合うことでなれ合う調和なんて卑しい。

((記者質問)
それでは、万博のプロデューサーを引き受けた
理由はなんですか。)

危険だからだ。
人間は瞬間瞬間で自分の進むべき道を選ぶ。
その時私はいつだって、
まずいと判断する方、危険な方にかけることにしている。
極端な言い方をすれば、
おのれを滅びに導く、
というより、
自分を死に直面させる方向、
黒い道を選ぶということだ。

無難な道を選ぶくらいなら、
わたしは、生きる死を選ぶ。
それが、わたしの生き方と筋だ。
……………………………………………………………………………….

インド哲学発祥の時代や、ベートーヴェンの馬車で移動の時代から、
人類は進歩なんかしていないのだと私も思いました。

>人のスピードではまったく追いつけないような速さで、テンポがのんびりしている人間から言わせると無理やり生き急いでいるような感覚

ジョージ・ハリスンも、物質主義に対して疑念を抱き、
インド哲学の「夢見るような精神世界」を発見しながらも、
ベートーヴェンに自虐的になり、生き急いだのですね、
現代人の我々のように・・・。

何故?と訊ねたら、彼も岡本太郎氏と同じく、こう答えるのではないでしょうか。

「危険だからだ。
人間は瞬間瞬間で自分の進むべき道を選ぶ。
その時私はいつだって、
まずいと判断する方、危険な方にかけることにしている。
極端な言い方をすれば、
おのれを滅びに導く、
というより、
自分を死に直面させる方向、
黒い道を選ぶということだ。

無難な道を選ぶくらいなら、
わたしは、生きる死を選ぶ。
それが、わたしの生き方と筋だ」

でも、ひょっとして、いつの間にか、無意識のうちに、
今は日本全体も、そうなってしまったのかも・・・。
それは、悲しい定めと性(さが)なのでしょうか・・・。

「発展」と「破滅」は紙一重です。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
昨日の栃木、残念ながら仕事でした(笑)。
とはいえ、まったく空気感が違い少々驚きました。天気も良かったせいもあり、時が止まったような感覚に襲われました。
鉄道に関してはまったく疎い僕ですが、ご紹介のような映像をボーッと見てみるのもいいかもしれませんね。
「0の記憶」という「0(ゼロ)」にシンパシーを感じます(笑)。

ところで、さすがは岡本太郎です。いちいち深い!

>でも、ひょっとして、いつの間にか、無意識のうちに、
今は日本全体も、そうなってしまったのかも・・・。

あー、それは言えているかもしれません。
特に都会にいると無意識に「呼吸が浅くなっている」ようにも思います。
ゆっくりと、自分のペースで歩みたいものです。

>「発展」と「破滅」は紙一重です。

確かに・・・。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む