グリモーのブラームス第2協奏曲

偶然というのはやっぱりないのだと痛感する。
昨晩と今朝、僕はエレーヌ・グリモーがNHK交響楽団と共演したブラームスの第2協奏曲を鑑賞した。ジンマンのブゾーニやシェーンベルクは良かった。でも、それ以上に、グリモーとのブラームスはお世辞抜きに最高だった。そして、今もやはり彼女の弾くブラームスに浸りながらこのブログを書く。

昨日の記事にJudyさんからコメントをいただいていた。何とグリモーのブラームスの話題。僕はJudyさんとはお会いしたことがない。たまにいただくコメントだけでのおつきあい。しかも、どうやらJudyさんは米国在住のよう。海の向うのまだ見ぬ人と「つながっている」という感覚をいただけたことが何より嬉しくてならない・・・。

ちなみに、僕は今年、不覚にもグリモーが来日することを知らず、1ヶ月ほど前にチケットを入手しようと努力した。しかし、当然押えることが不可能だった。そもそもN響のサントリー定期は会員でほぼ埋まり、それこそ数枚の券しか売りに出されないのだと。ましてやジンマン&グリモーである。甘かった。
ただし、実にその日、僕はインフルエンザで寝込んでいた。いずれにせよ行けなかったのである。チケットを持っていながら行けないのと最初から行けなかったのでは落胆の度合いが違う。そう、チケットがとれなくて良かったのだ。

で、昨日、ようやくテレビでグリモーのブラームスに触れることができた。彼女が舞台に出てくるだけで年甲斐もなく感動した。そして一挙手一投足に心が震えた。もはや異常である(笑)。

NHK交響楽団第1746回定期演奏会@サントリーホール
・ブゾーニ:悲しき子守歌~母のひつぎに寄せる男の子守歌作品42
・シェーンベルク:浄められた夜作品4
・ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83
エレーヌ・グリモー(ピアノ)
デーヴィッド・ジンマン指揮NHK交響楽団(2013.1.16Live)

冒頭のホルンはブラームスがクララに贈った「想い」である。そして、それに対してクララはピアノで応える。この愛のやり取りこそが第2協奏曲の軸である。ピアノと管弦楽の拮抗。いずれも互いを支配することができぬという調和。ある時期、ロベルト・シューマンの作品を巡ってヨハネスとクララは絶交するが、晩年仲直りする(そのきっかけとなったのが1892年の作品118。この音楽についても若きグリモーの演奏は絶品)。彼らも人間。感情を露わに自身を主張するものの、やっぱり「ひとつ」だったということだ。

そもそも、一番脂の乗った時期に書かれたこの作品はヨハネス・ブラームスの最高傑作と謳っても言い過ぎでない。この名作をエレーヌ・グリモーは「男性」として音楽を創り出す。荒々しい中に実に繊細な面を表出し、ほとんどヨハネスとクララが一体となった音楽が奏でられるのである。ライブならではの瑕があろうとそんなことは一切構わない。
彼女のピアノに向かう姿勢と、その時の心の状態が重要なのだ。

第2協奏曲はブラームスが45歳から48歳の時期に書かれている。
僕は現在49歳。実に今の僕の年頃に生み出されたということ。そのことだけでも感慨深い。

このステージを観て、僕はますますエレーヌ・グリモーのファンになった。
演奏時の男性的な厳しさと終演時の少女のような可憐な微笑。この2つの側面がグリモーその人を如実に表す。


9 COMMENTS

Judy

おお、実際のBlog上に名前を出されて嬉しいやら恥ずかしいやらです。このぶんでは自然にCloudの流れに乗ってお会いすることもあるかもしれませんね。お察しの通り私はアメリカに住んでいます。Apple本社から程近いCupertinoというところです。今まではSan Franciscoでオペラや演奏会があると行っていましたが、引退してからは運転がすっかり億劫になり、音楽はひたすらCDとYoutubeに頼っています。だからこそ2月22日のGrimaudの発見は衝動的でした。Grimaudのブラームス#2さぞかし良かったことでしょう。羨ましい!切符はそんなに入手しにくいのですか?追っかけをやるにしても本気で切符の入手方法を調べねば、、、むむむ。

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Judy

アメリカに長く住んでいるとこれだからいけない。「衝動的」ではありません、衝撃的でした。すまん。

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ふみ

このグリモーの後ろに僕の姿が…(笑)

N響のサントリー公演は確かに一般発売では買えませんが、金に糸目を付けずヤフオクなんかだとかなりの量が出回っていますよ。それであれば買える確率は99%かと思います。
次回はブラPコン1番だそう…またブラームスかぁ…うぅん。

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岡本 浩和

>Judy様
自然のCloudの流れに乗って・・・、ということでよろしくお願いします。(笑)
やっぱりWest Coastでいらっしゃるんですね。
切符はN響のサントリー公演が特に難しいというだけで、そうでなければ余程のことがない限り早めに対処すれば取れると思います。次回11月はブラームス1番だそうです。

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岡本 浩和

>ふみ君
何、ひょっとしてこの日の公演聴いてるの?P席?
うらやましい・・・。
ヤフオクまで使うとなるとよっぽどの公演だね。かつてのカルロス様とか・・・。
ちなみに、11月はリサイタルもあるんでしょ?

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ふみ

そうですね、この公演をLA辺りで聴きましたね。ちょうどグリモーの右肩後ろ辺りですね。ロンドン時代にブラームスのPコン1番、サントリーで2番ということで正直次回はシューマンかラヴェルを期待していたのですが…贅沢はいけませんね(笑)

んー、最近は国内オケでも売切れでヤフオク…という流れは結構ありますよ。それこそテミルカーノフ/読響のチャイ6の公演とかも既に完売ですし、例えば外来オケ公演でもS席のみ残っている場合とかにD席を求めてヤフオク…という流れもありますし、最近はオークションの壁は低くなっていると思います。
CDでもレア盤や海賊盤が出回ったりして、正直結構活用しています。

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ふみ

グリモーはリサイタルやるんですかねぇ…恐らくやるとは思いますが、曲目はいかに。

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岡本 浩和

>ふみ君
なるほど。じゃあ、角度によってはテレビに映ってるかもね。(笑)
僕はどちらかというとリサイタルを聴きたいので、楽しみにしておきますわ。
オークションというのは使ったことないからなぁ・・・。
それもチャレンジしてみよう。

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