音楽は人々を喜びで満たし、癒す~パガニーニ大練習曲

音楽は人々を喜びで満たし、癒す。
音楽は「聴き方」によって僕たちの意識をより高い次元に誘う。
それは・・・、とても不思議な、そして魅力的な力だ。

パガニーニによる超絶技巧練習曲S.140。
1832年、フランツ・リストはパリに登場したニコロ・パガニーニの演奏に衝撃を受けた。そしてそのヴィルトゥオジティを自身のピアノで再現したいと目論み、この類稀なる天才ヴァイオリニストの旋律を拝借し、リストなりのアレンジを施し、1838年に全6曲の曲集を発表する。
ところが、リストの本性がここで出る。無意識か意識的か、自身を誇示しようと(?)音楽は過剰に味付けされ、技術的にほとんどのピアニストがお手上げという超難曲揃いだったのである。20世紀になり、かのウラディーミル・ホロヴィッツすら「とても無理だ」と匙を投げた代物たち。

リストがヴィルトゥオーゾ・ピアニストとしてヨーロッパ中に名を馳せていた時代、行く先々で追っかけファンが現れ、会場では失神する女性ファンもいたということだから驚く。もちろん彼の容姿のせいもあろう。あるいは、もはや想像するしかないが、相当に巧い、官能的なピアノを聴かせたのかもしれない。ただし、極めて冷静に、客観的に彼の音楽を見つめてみて、残念ながら僕はやっぱりシンパシーを感じない。時に冗長で、どちらかというと表面的な華美さと、エゴイスティックな内面を読み取れてしまうから。

プライベートも仕事も彼はやりたい放題やり尽くしたのだろうか。
1850年前後に、フランツ・リストはどうやら目覚めたようだ。作品においても余計なものが排除され、より凝縮された世界を築き、そして音楽の内側に信仰心が感じとれるようになるのだ。リストは自身を過剰に演出することより、より多くのピアニストに自分の作品を演奏してもらうこと、そしてより多くの人々に作品を聴いてもらうこと、そこに主眼を置き、作品を推敲、練磨する。そして、1851年、パガニーニ大練習曲S.141が生み出される。

リスト:
・パガニーニによる大練習曲S.141(1851)
・パガニーニによる超絶技巧練習曲S.140(1838)
・第1番ト短調(シューマンの練習曲主題を含む異稿)
・第4番ホ長調(初稿)
・第5番ホ長調(異稿)
・マゼッパ(異稿)S.138(1840)
・トレモロを伴う跳躍(技巧的な練習曲第62番)
レスリー・ハワード(ピアノ)(1997.4.29-5.1録音)

それにしても現存するすべての作品(異稿なども含め)を録音したというのだからレスリー・ハワードのその試みには脱帽。
「ラ・カンパネラ」の初稿は、どちらかというと完璧なるパガニーニ讃歌。主題の元ネタであるヴァイオリン協奏曲第1番フィナーレの別の主題も使用されており、興味深い。決定稿は虚飾を排し、整理され、という感じか(調性も違う)。並べて聴き比べてみると実に面白い。音楽の形はあってないようなもの。リストはいつも自由に弾いていたはず。当時、一体幾通りの「ラ・カンパネラ」が弾かれたことでしょう。

「超絶技巧練習曲」も「大練習曲」もクララ・シューマンに献呈されたということだから、少なくともクララは「超絶技巧」の方を軽々と弾いてのけたのだろうか・・・、さていかに?

 


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