カラヤンのリスト管弦楽曲集を聴いて考へる

中島剛ピアノ・リサイタルまであと4日。しばらくリストの音楽に浸り切っているので、心も身体もリストに捧げ尽くした気分(笑)。それにしても彼の音楽は膨大で錯綜しているゆえ掴みにくいが、性格や人となりを把握して聴き込んでゆくとそれなりにいろいろと見えてくるのだから面白い。
音楽というのはそもそも作曲家の頭脳を超えて天から降ろされた奇跡だと僕は信じているが、そうは言ってもやっぱり人間を媒介にする以上音楽そのものにその人の性質が反映される。リストが交響詩を創案し、いわゆる標題音楽に拘った理由は幼少年時の基礎教育をまともに受けて来なかったコンプレックスの裏返しなのだろうか。音楽以外にも文学、哲学、宗教などあらゆる勉強を自身に課したこと、そして彼の言う「標題音楽」というのが、何かの描写としての音楽ではなく、もっと精神性を重んじた、そこからインスパイアされたものを音楽に転化したことだということからそのことは想像できる。

それと、リサイタルで女性の追っかけが現れ、失神者も出るほどだったという伝説。リストが起こした革新や、彼の努力の賜物である高度なテクニックによる自作自演というのは、まさに現代のシンガーソングライターのはしりのようだったのかも(昔、初めてビートルズの初期のコンサートの模様が収録された映像を観たとき、若い女性たちが音楽など聴かずに泣き叫んでいる姿に吃驚したが、まさにあれと同じような空気だったのだろう)。真に音楽には天使も魔物もいるということ。

カラヤンによる管弦楽曲集。

リスト:
・メフィスト・ワルツ(1971.9録音)
・交響詩「前奏曲」(1967.4録音)
・ハンガリー民謡に基づく幻想曲(1960.12録音)
・ハンガリー狂詩曲第5番(1975.10録音)
・交響詩「マゼッパ」(1961.2録音)
・ハンガリー狂詩曲第2番(1975.10録音)
・交響詩「タッソ、悲哀と勝利」(1975.10録音)
・ハンガリー狂詩曲第4番(1967.4録音)
シューラ・チェルカスキー(ピアノ)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

どうにもカラヤンにぴったり。特に「ハンガリー」と名のつく作品は出色。そういえば、リストはハンガリー人でありながらマジャール語は解せなかったし、ほとんどその地に住居を構えたことはなかった。それでも生涯ハンガリー人としてのアイデンティティを保ち続けた。そのためかどうなのか、僕は自分自身が自分自身の田舎に感じるような「郷愁」を感じとってしまう。いかにもソフィスティケートされたカラヤンの棒においても、どうにもリストの「ハンガリー」音楽は泥臭く聴こえるのだから、それはカラヤンの巧さだろう。特に、チェルカスキーを独奏者に迎えた「ハンガリー幻想曲」が見事。

ということで、15日のお話の概要は決まった。生い立ちのこと、恋愛のこと、革新のこと・・・。
お盆中ということもあり、お忙しいとは存じますが、リストの最高傑作ロ短調ソナタと「巡礼の年」(~「ペトラルカのソネット」)などが聴けます。一世一代!!ぜひとも足をお運びを。

 


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