エレーヌ・グリモーのラフマニノフ&ラヴェル(DENON録音)

rachmaninov_ravel_grimaud_cobos本日のさくらカレッジでのとある淑女との会話。
テーマがラフマニノフの第2協奏曲で、ツィマーマン&小澤のグラモフォン盤を聴いた後、グリモー独奏、アバド指揮ルツェルン祝祭管の実況収録盤を観た。グリモーが狼と暮らしていることや共感覚の持ち主であることを紹介したから、そのことに触発されて話しかけて来られたよう。

「実は孫娘が人の色が見えるのです。娘(つまりお母さん)は、宇宙からの声が聴こえて・・・云々などという話をするので気味が悪いと思っていたのですが、共感覚の話を伺ってどうしたものかと思いまして・・・」
僕は即座に反応した。
「いや、人間のオーラというのは各人それぞれで、今の若い人にはそういうものがしっかり見える人がいるので、むしろ能力として捉えて潰さないでいてあげた方がいいですよ」

クラシック音楽入門講座にいらしている方は皆素直だ。きちんとアドバイスをお聞きになる。「なるほど」と納得し、「せっかく今もピアノを習っているので、そういう力を伸ばしてあげれるよう見守ります」と言っていただいた。そう、神様から授けられた特殊能力(いや、この言い方は正しくない。本来人間誰しもが持っている能力なのだから)ゆえ周囲が理解することが最も大事。

僕が何十年もかけてワークショップクラシック音楽講座を主宰している理由はここにある。こういう出逢いがきっかけになって開かれる人々がこれまでも多数いた。目に見えない世界を信じない人からすれば眉唾かもしれぬが、実に真実が在る。

人口に膾炙した、あまりに通俗的といわれるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はやっぱり名曲だ。わかっていても聴けば、観れば心を動かされる。それがエレーヌ・グリモーの演奏となるとなおさら。せっかくだから、20年少し前に若きグリモーが録音した音盤を聴いた。20年前のエレーヌも間違いなくエレーヌだ。

・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18
・ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
エレーヌ・グリモー(ピアノ)
ヘスス・ロペス=コボス指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1992.6.16-17録音)

録音時、グリモー弱冠21歳!!!しかし、ほとんど基本の解釈は変わらず、むしろ老練の極みともいえるほどの安定感を保つ。これこそ「共感覚」の賜物なのだろうか。聴く者の感性を揺るがせ、頭の中を真っ白にさせるラフマニノフがこれまであったろうか。映像のない、音だけの世界からもそういうものが垣間見えるのだから本物だ。
果たしてエレーヌにはこの音楽は何色に見えているのだろうか?緑か赤か・・・、それとも?

ところで、一方のラヴェル。これまた素晴らしい。洒落ていながら決して表面的に陥らず、音の一粒一粒が際立ち、音楽が滞留することなく流れる。そして、オーケストラを逆に鼓舞するかのように牽引し、無意識にリーダーシップをとるかのような堂々たる風格。
アダージョ楽章のグリモーの演奏は「祈り」だ(内に愉悦も聴こえる)。まさに天の調べ・・・。脱帽。

 


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2 COMMENTS

Judy

Sixth Sense in Human Brain Mapped by Scientists
ちょうど今日付けのニュースにこんな話題が載っていました。第六感といっても「死んだ人が見えることではありません。」との説明付きで、なにやら脳の中のNumerosityを科学的に測ることに成功したのだそうです。numerosity is derived from visual processing of image features… ここまできて、Helene Grimaudが音楽を色彩で感じるって「このことだったのね〜」と納得していたところでした。もはやコンブリオさんにはHeleneの時しか反応を示さない勝手な読者となりましたが、あまりにも符丁があったので一筆。もともと第六感が発達していたHeleneであれば21歳の時に弾いたものでも老練の極みと感じられるのでしょう。私もあのオオカミが表紙のCDを手に入れて、そんなに好きでもなかったラフマニノフの二番を初めて「好きだ!」と思えたのです。ありがたいですね音楽家って。

桜カレッジの淑女の孫娘さんも楽しみですね〜。地球上はこういう子供で溢れてほしいですね。

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岡本 浩和

>Judy様
なるほど、第六感が計測できるようになったとは素晴らしいです!
ありがとうございます。
エレーヌ・グリモーは本当に魅力的です。今秋来日するのですがコンチェルトだけでリサイタルがないようなので残念です。

>地球上はこういう子供で溢れてほしいですね。

同感です。

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