
朝比奈隆の全盛期は1980年代後半から90年代の初めの頃だったと僕は思う。
晩年の枯淡の境地も確かに素晴らしいが、まるで「壮年」といってもおかしくないくらいの生気が(少なくとも手兵大阪フィル、そして東京での新日本フィルへの客演において)感じられたのがあの頃だった。当時の朝比奈の実演を聴く機会をとても多く持てたことに今となって感謝しかない。
1990年初頭の新日本フィルとのブラームス・ツィクルスも、その直前のベートーヴェン・ツィクルス同様最高の出来だった(会場が残響乏しいオーチャードホールであったことは残念だったけれど)。第2夜終了後、金子建志さんとのインタビューで朝比奈御大は次のように語っている。
質感ですよ、そうなんですよ。オケの音出すなんてのは、太鼓叩いたり、ラッパ吹いたりで出るんですけどね、やっぱりオーケストラの主体は何といっても弦楽合奏なんですね。弦楽合奏が非常に内容の濃い、ぶ厚い響きを作らなければ、管楽器は上に乗って来ないですからね、大変いい傾向だと思って。
この仕事を4つやることによって、いい演奏をしてお客様が喜んで下さるというのももちろんですけども、その間にオーケストラが、何かひとつの奏法なり、表現法を会得して、ひとまわり大きなオーケストラになって行く、そういう事も私の役目じゃないかと思いますんでね。きれいに仕上げる指揮者はたくさんいますからね、それは心配ないんですけど・・・非常にこう、音の響きの重さみたいなものを・・・
(金子建志「ブラームス考談」)
~FOCD9035/8ライナーノーツ
弦楽器の厚さと質感。
確かに朝比奈御大の言うとおりだと思う。
・ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73
朝比奈隆指揮新日本フィルハーモニー交響楽団(1990.4.3Live)
すべてが最高の名演奏として刻まれている。
そして、当日当夜(ツィクルスすべて)、その場で実際に聴いていた僕にとって、FONTECのこのセットは生涯の宝物である。(36年も前のこととは思えない、生々しさと、そのときの感動がめくるめく蘇る)
朝比奈隆指揮新日本フィルのブラームス交響曲第3番(1990.5.1Live)ほかを聴いて思ふ
朝比奈隆指揮新日本フィルのブラームス二重協奏曲(1990.2.5Live)を聴いて思ふ
朝比奈隆指揮新日本フィルのブラームス協奏曲第1番(1990.5.1Live)を聴いて思ふ 特に、比較的短期間で書かれた交響曲第2番は朝比奈の十八番であり、幾種かリリースされる音盤の中でも特筆に値する名演奏だといえる。文字通り重厚な響きの中で、陽気で明朗な音楽が、当時81歳の老巨匠によって披露される様子は天下一品(DVDによる映像を観ても明らか)。
※権利上の問題があるのか、当該演奏はYoutube含めどこにもアップされていないのが実に残念。
