クーベリック指揮バイエルン放送響 ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版1878/80稿)(1979.11録音)

半藤一利さんの「当て字の話」(2012年3月)。

昨年末放送のNHKドラマ『坂の上の雲』で、ロシアの軍港ウラジオストックを、俳優さんたちが「ウラジオ・ストック」と真ん中で区切って言っているのがやたらと気になった。日本と歴史的につながりの深い港湾都市であるから、浦と塩とが連想され、ストックは在庫で、なんとなく倉庫の立ちならぶ港町を思い描く人も多いらしい。
それに、昔の人はこれを浦塩斯徳と書いた。もちろん当て字である。こう書かれれば、どうしたってウラジオ・ストックと読んでしまう。
正しくは「ウラジ・オストック」と区切って読む。1961年に打ちあげられた初の有人飛行船は名をウォストークといった。じつはこのオストックも、ウォストークまたはヴォストークと読むほうが原音に近いそうな。意味は、「東方」。そしてウラジとは支配すること。で、ウラジ・オストックは東方支配の拠点、つまりロシアの東進政策のシンボル港の意味をもっている。
明治の人はとにかく言葉を漢字化することにものすごい情熱をそそいだ。アメリカを亜米利加、イギリスを英吉利、フランスを仏蘭西、ドイツを独逸。それはまったく使わなくなったいまも米国、英国、仏国、独国と短くなって生き残っている。とくに手紙を候文で書くとき漢字で書こうとしたから、矢張、目出度、浦山敷などと当て字をどしどし採用した。結納に使う勝男節、寿留女、子生婦なんかは縁起をかついだ珍妙な当て字である。
この当て字の名人に夏目漱石がいることは知られている。魚の秋刀魚を三馬と書いたり、」バケツを馬穴としたりは有名であろう。『坊っちゃん』には「道具屋を呼んで来て、先祖代々の瓦落多を二束三文に売った」とか、「下宿の五倍くらい八釜しい」とか、いかにも漱石的漢字で読む方も楽しくなる。

半藤一利「歴史探偵 忘れ残りの記」(文春新書)P64-65

「ロマンティック」を「浪漫的」としたのも同じようなケースだと思った。
ラファエル・クーベリックのブルックナーに触発され、久しぶりに「ロマンティック」を聴いた。

クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィル ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(レーヴェ1890年改訂版)(1955.4録音) フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調(フェルディナント・レーヴェ改訂版)(1951.10.29Live)

レーヴェ改訂版(フルトヴェングラー盤、クナッパーツブッシュ盤)に慣れた耳に、原典版(ノヴァーク版)は実に新鮮だった。
それこそブルックナーの本懐たる「動静相まってキレが生じる」を体現する音楽に、当時、僕は唸った。そしてまた、久しぶりに耳にしたクーベリックのブルックナーに力を感じ、音楽宇宙の拡がりのあまりの美しさを思った。

・ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版1878/80稿)
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団(1979.11.18-21録音)

ミュンヘンはヘルクレスザールでの録音。
高校生の僕にブルックナーの清澄な響きと宇宙の拡がりを思わせてくれた想い出のレコード。

今日も感激した。
アントン・ブルックナーは天才だ。

クーベリックのブルックナー第4交響曲を聴いて思ふ クーベリックのブルックナー第4交響曲を聴いて思ふ

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