霜月だというのに妙に暖かい。自転車を駆って夜風に吹かれながら酔いを醒ます。
シン・ヒョンスという韓国のヴァイオリニストを聴いた。実に美しく端整な音楽を奏でる人。いかにも正確でカチッとした音楽たち。確かにベートーヴェンはそれで良い。しかし、ドビュッシーやラヴェルについてはどうなのか?こういうラテン魂溢れる音楽には「遊び」の要素が欲しい。大陸の人だからもっと感情的で熱いものを期待していたけれど、意外にクール。その分、音楽の輪郭は一層明確にはなるのだけれど。
ドビュッシー最晩年のソナタは、妖艶な第1楽章に始まり、とても明るい、いや明る過ぎるものだった。本来はもっと暗い、鬱蒼とした雰囲気の楽想なんだと僕は思うのだが、彼女の音楽は実に聡明なものだった。しかし、その分表面的。技巧的には相当に巧いのだけれど。
ラヴェルのツィガーヌが今夜の白眉だったか・・・。芯がしっかりとした音が繰り広げられた。冒頭独奏の部分は勢いがあり、感銘を受けた。
シン・ヒョンス ヴァイオリン・リサイタル
2013年11月1日(金)19:00開演
紀尾井ホール
シン・ヒョンス(ヴァイオリン)
佐藤卓史(ピアノ)
・ベートーヴェン:ロマンス第2番ヘ長調作品50
・ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタト短調
・ラヴェル:ツィガーヌ
休憩
・バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
・プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調作品94bis
アンコール~
・フォーレ:夢のあとに
・ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲
・ドビュッシー(ハイフェッツ編):美しい夕暮れ
バルトークも流麗で美しい演奏だった。とはいえ、踊りの要素には少し欠けていたかも。ただし、終曲「速い踊り」はとても迫真に迫るもの。プロコフィエフも随分冷静な音楽が披露された。冷めた第2楽章、そしてまろやかな第3楽章。終楽章のクライマックスに向けてのアッチェレランドは高速で回る指の超絶技巧と相まって圧巻。
3つのアンコールも美しかった。
うーん、終わってみて思うのはどうにも記憶に残らないということ。おそらくどの音楽も同じテイストであったことが原因なのかも。フランスの音楽もハンガリーの音楽も、そしてロシアの音楽も不思議にドイツ風だった。ラテン系はもっと羽目を外してほしい。ロシアものはもっと荒涼とした大地を思わせるものに・・・。あくまで僕の勝手な見解。
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