イザベル・ファウスト バッハ無伴奏ヴァイオリン作品全曲演奏会

isabelle_faust_bach_20131103会場の音響がとにかく素晴らしい。譜面が置かれた舞台にたったひとつのスポットライトが当てられ、イザベル・ファウストが登場するや聴衆は息を凝らして最初の音を待つ。お行儀良し。

冒頭から次元が違う。この人は強弱濃淡の紡ぎ方が自然で見事で、本当に巧い。ソナタ第1番で、一瞬僕は我を忘れた。というか、ほんのわずかな時間だと思うのだが記憶を失った。決して眠ってしまったわけではないのだけれど、とにかく数秒か数分か記憶がない。音楽の真摯なあまりの美しさのためなのかどうなのか・・・。
前半の白眉はやっぱりパルティータ第1番。僕が驚いたのは、各ドゥーブルにおけるまるで宙から音を引き出して紡いでいるかのような極めて美しい弱音が、それでありながらとても芯の太い音を出していたところ。各舞曲のどっしりとした安定感のある音楽との対比に思わず武者震い。素晴らしい。
そして、ソナタ第2番の峻厳で崇高な響き。なるほど、イザベルはソナタには宗教性を見出し、パルティータにおいては世俗性を見出し、解釈・表現する。このあたりは音盤を聴いているだけでは絶対にわからなかったところ。

イザベル・ファウスト
バッハ無伴奏ヴァイオリン作品全曲演奏会
2013年11月3日(日・祝)15:30/18:00開演
彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール
第1部
・ソナタ第1番ト短調BWV1001
・パルティータ第1番ロ短調BWV1002
・ソナタ第2番イ短調BWV1003
休憩
第2部
・パルティータ第3番ホ長調BWV1006
・ソナタ第3番ハ長調BWV1005
・パルティータ第2番ニ短調BWV1004
アンコール~
・ピゼンデル:無伴奏ヴァイオリン・ソナタイ短調から第1楽章

1時間余りの入れ替え休憩を挟み、第2部はパルティータ第3番から始まる。何と瑞々しいバッハか。そしていかにも端正で理知的な響き。ソナタ第3番を聴いて思った(フーガ楽章は真に素晴らしい)。この人の音楽は楽想が七色のように変化し、しかもそれがどの瞬間においても理想的で、決して四角四面に陥らないところが見事。そう、理性的なのだが、内なる感情をうまくコントロールし、その分「遊び」の部分に優れる。このことも実演を聴かないとわからないだろう。
さらに、パルティータ第2番。サラバンドの何と思索的で深い音楽であることよ。続くジーグでは大いなる解放。一呼吸おいての最終章シャコンヌはもはや別次元。言葉も出ない。
お行儀良い聴衆は最後の音の残響が消えるのを待ち、ソリストの腕が下りるのを待ち、15秒ほどの水を打ったような静寂の後の拍手喝采と歓喜。

この超絶シャコンヌの後にはどんな音楽も不要と思っていたが、まさかのアンコール・・・。無伴奏曲だが、不明(イザベルが演奏前に紹介したが、声が小さくて聴き取れなかった)。おそらく明日ホールのサイトに公開されるだろうからそれで確認することにしよう。
※ということで、ピゼンデルの無伴奏ソナタから第1楽章だった。この曲は寺神戸亮氏の「シャコンヌへの道」にも収録されていたのを思い出した。

 


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