鈴木雅明指揮BCJのクリスマス・オラトリオを聴いて思ふ

bach_christmas_oratorio_bcj1734年のヨハン・セバスティアン・バッハは49歳、ちょうど今の僕と同じ年齢だった。この年にいくつものカンタータを転用してクリスマス用のオラトリオが作曲された。バッハの多作は、自身の作品をパロディ化し、新たな作品を生み続けるという方法に依るところが大きいが、このオラトリオの実に華やかで喜びに満ちた音楽はまさにその時その瞬間に創造されたような新鮮さを持つ。

1734年12月25日から27日かけて初演された第1部「いざ祝え、この良き日を」、第2部「この地に野宿して」、第3部「天の統治者よ、この歌声をきけ」を聴いた。3日にわたって語られるキリスト生誕の物語は真に神々しい。

J.S.バッハ:クリスマス・オラトリオBWV248~
・第1部「いざ祝え、この良き日を」
・第2部「この地に野宿して」
・第3部「天の統治者よ、この歌声をきけ」
モニカ・フリムマー(ソプラノ)
米良美一(カウンターテナー)
ゲルト・テュルク(福音史家、テノール)
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン(1998.1録音)

ライプツィヒ時代のバッハは、教会音楽の作曲に精を出す傍ら、世俗音楽の創作にも注力した。コレギウム・ムジクムでバッハが上演した作品は世俗カンタータの他、それまでにバッハが生み出していた数多の名器楽作品たち(ヴァイオリン協奏曲、ブランデンブルク協奏曲、管弦楽組曲、平均律クラヴィーア曲集第1巻など)。そんな中、コレギウム・ムジクムで初演されたカンタータを基に新たに編まれたのがこのクリスマス・オラトリオなのである。

バッハの真髄がここある。すなわち神性と世俗性の交歓とでもいうのか。もちろん音楽のステージに優劣などは存在しないのだが、とはいえ18世紀前半のことである。キリストを神だと崇める時代に、ある意味キリストは人間だったと公言したようなものではなかったのか・・・。僕の考え過ぎなのかもしれないが、少なくとも鈴木雅明&BCJによるこの演奏には一切の抹香臭さがない。

それゆえに繰り返し聴くのに耐える録音。
見通しが良く、明朗な音楽が常に鳴り響く。本当に巧い。

以下、クリスマス・オラトリオにまつわる鈴木雅明氏の言。見事だ。

そう、クリスマスは、このイエス・キリストとの出会いの日なのです。バッハは本来6日間にわたって、1部ずつ演奏されるこのオラトリオを通して、己が心とイエスとの出会いを描き出したのでした。いたるところに用いられたコラールが、バッハに重なる私達の思いを歌います。

自身の内なる神との邂逅の日こそクリスマスだということ。
心静かに・・・。

 


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