レオンスカヤ&マズアのチャイコフスキー第2協奏曲を聴いて思ふ

tchaikovsky_concerto_2_leonskaja僕は長い間チャイコフスキーを侮っていた。
残念にも知らない作品が多すぎる。しかしそれは裏返すと、これから新しい作品に出逢い、新たな喜びを味わえるということでもある。何だか人生でまたひとつ楽しみが増えたようで嬉しい。

夕べ、マキシム・ヴェンゲーロフの演奏で「憂鬱なセレナード」や「懐かしい土地の思い出」などを聴いてとても感激した。確かにモーツァルトの協奏曲は美しくも安定した名演奏だったのだけれど、一晩明けてみてチャイコフスキーのあの愁いを帯びた旋律や内なるパッションが漲る音楽がどうにも頭から離れない。「瞑想曲」だったか「メロディ」だったか、独奏ヴァイオリンとチェロの独奏パートが対話するシーンなど唸った。実にきれいだった。もっともこの作品はもともとピアノ伴奏によるものだから弦楽オーケストラ用のアレンジは別人のものだろうゆえ、純粋にチャイコフスキーの技術だとは言えないのだけれど。

特にチャイコフスキーの場合、ごく一部の限られた作品ばかりが突出して演奏機会が多いが、舞台で披露されるべき作品はもっとたくさんあるはず。昨日の演奏曲然り、先日の「マンフレッド交響曲」然り。

エリーザベト・レオンスカヤの独奏によるピアノ協奏曲第2番を聴いた。あまりに有名過ぎる第1協奏曲の影に隠れ、実に不遇な作品のひとつ。第1楽章は確かに冗長な印象を与えないでもない。しかし、ヴァイオリン協奏曲、あるいはチェロ協奏曲かと誤解を招くほど2つの弦楽器の独奏が活躍する第2楽章アンダンテ・ノン・トロッポの豊饒な美しさはチャイコフスキーならではで、ピアノを含めた旋律の美しさは類を見ないほど。しかも、何より素晴らしいのがやっぱりこれらの楽器の「掛け合い」から生み出される「内なる秘めたパッション」なのである。

チャイコフスキー:
・ピアノ協奏曲第2番ト長調作品44(1992.11&12録音)
・ピアノ協奏曲第3番変ホ長調作品75(遺作)(1996.1録音)
エリーザベト・レオンスカヤ(ピアノ)
クルト・マズア指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

第1楽章展開部の長いカデンツァが聴きもの。第1主題や第2主題の断片がうまく組み合わされ、しかもピアニストに超絶技巧を要求するだろうヴィルトゥオーゾ的響き。再現部第2主題のたおやかな印象からコーダに引き継がれ第1主題による加速度的畳み掛けはお決まり。ここは手放しで感動させられるところだが、あまりに第1協奏曲と双生児的な手法ゆえ「二番煎じ」と敬遠されるのかも。いやとにかくカデンツァのところだけでも、という僕の思い・・・。

いまでこそ代表作とされる協奏曲第1番も初演時はニコライ・ルビンシテインに否定され、ヴァイオリン協奏曲も初演当初、評論家のエドゥアルト・ハンスリックに酷評された。そういう事実もあったのだろうが、チャイコフスキーはメランコリックで基本的に自己批判的な人間だった。協奏曲第2番についてもやっぱり自信はなかったようだ。

作曲の2日後の手紙には決して前向きとは言えない作曲の動機が・・・。
なるほどこういう事情の中で書かれた作品だということか・・・。

数日前に私は心の奥底に漫然とした自分への不満感を抱きはじめ、それが次第に倦怠に発展していくのを感じ、私が求めていたものは仕事であったことを認識して、少しずつそれに自分を適応させはじめています。
1879年10月12日付、フォン・メック夫人宛
作曲家別名曲解説ライブラリー8チャイコフスキーP166

 


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3 COMMENTS

畑山千恵子

レオンスカヤを初めて聴いた時が、マズアがゲヴァントハウス管弦楽団とともにベートーフェン・ツィクルスをやった時で、1989年でしたから、東欧革命の息吹が漂う名演でした。その折、予定していたアンネローゼ・シュミットが急病で出演できなかつたため、レオンスカヤが代演し、聴き応えのある演奏でした。
マズアとレオンスカヤと言えば、この時を思い出しました。

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kosugiyuiko

岡本浩和様
突然のコメントを失礼いたします。
「20代女子の携帯ゲーム機日誌」というサイトを運営しているkosugiyuikoと申します。
この度、岡本浩和様のサイト「アレグロ・コン・ブリオ~第6章」を拝見させて頂き
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