Miles Davis”Star People”を聴いて思ふ

Miles_Davis_Star_People深夜にマイルスを燻らせるのである。煙草ではない・・・。
酔い覚ましのマイルスとでも形容しようか。常に冒険があり、いつも「前しか見ない」マイルスの音楽はやっぱり刺激的だ。

1973年3月21日のスティーヴン・デイヴィスとのインタビューをひもとく。

スティーヴン:あなたがいま、当時(サヴォイで初めてリーダー作を録音した頃)を振り返ると・・・
マイルス:俺は振り返らない。絶対にな。俺の頭のなかにそれ用のスペースはないんだ。俺は先のことを考えるだけだ。
「マイルス・オン・マイルス―マイルス・デイヴィスインタビュー選集」P217

この言葉に彼のすべてがある。
僕など凡人は「振り返り」の重要性を吹聴し、そこに変革のヒントがあると説く。
しかし、天才は違う。確かにクリエイティヴィティの本質は先見だ。マイルスの音楽が常に何年か先を行き、当時の専門家含めた大衆を驚かしたことはある種の奇蹟。
そういえば、数ヶ月前「笑っていいとも!」を終えたタモリが言っていた。自分の過去の番組は一切観ない。それどころか反省すらしないのだと。
そうか、タモリのこの主義はマイルス・デイヴィスの影響なのかもしれない(ちなみにタモリはマイルス・フリークという意味では人後に落ちない)。

さて、1983年リリースの”Star People”を。
当然今聴いてもまったく遜色なく新しい。もはやジャズという枠を完璧に超える「マイルス」というジャンルの音楽がここでも聴こえる。何せ”Star People”なんだ・・・。

Miles Davis:Star People(1982.8.11, 28, 9.1, 1983.1.5 & 2.3録音)

Personnel
Miles Davis (trumpet, keyboards, concept)
John Scofield (electric guitar)
Mike Stern (electric guitar)
Bill Evans (tenor & soprano saxophone)
Tom Barney (electric bass)
Mino Cinelu (percussion)
Al Foster (drums)
Marcus Miller (electric bass)
Gil Evans (arranger)

今となってはすでに出尽くした当り前の方法によるが、あの頃は相当に革新的だったろう。18分超というタイトル曲が、インプロヴィゼーションという概念を打ち破る。ここには完璧な計算があり、各奏者の絶対的な力量を背景に見事な音楽が「語られる」。
マイルスのトランペットが相も変わらず泣き、マーカス・ミラーのベースが静かに意味深くうねるのだ。最高!!


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