フルート協奏曲ト長調の第2楽章アダージョの、何とも憂える旋律と横笛の哀しい響きに古を想う。
感情過多に陥らない古典派の作品群というのは真に肩が凝らない。形式が明確で、その上旋律も単純明快。特に、当時滅多に使用されることのなかった短調の表情に、何ともいえぬ翳りが垣間見え、音楽を聴く喜びが一層増す。
やっぱり光と翳はひとつであり、それこそ宇宙、自然の神秘だ。そうして、おそらくかつては人間の感情よりも宇宙そのものを表現するためのツールだった音楽のうちにも、大いなる光と翳が存在する。モーツァルトなどは極めて巧みに、かつ自然体でそのバランスをとることのできた天才だったのだと思う。煌めく長調の中に、虚ろな短調の調べが浮き沈みする時の癒し感と、短調から長調に転換し、一気に解放を呼ぶカタルシス・・・。
フリードリヒ・ハルトマン・グラーフのフルート協奏曲集。
この人の音楽もとても優しい。ひとつひとつが夢見るような調べであり響き・・・。永遠の横笛なり。そもそも卓越したフルーティスト兼作曲家として当時イギリス、オランダ、イタリア、スイスなどで活躍、名を馳せたというのだから、その意味では彼は国際派で、旅から旅へとあらゆる地域のイディオムを吸収し、結果的にそれが音楽に同化した。
フリードリヒ・ハルトマン・グラーフ:
・フルート、弦楽と2台のホルンのための協奏曲ハ長調
・フルート、弦楽、2本のオーボエと2台のホルンのための協奏曲ト長調
・フルート、弦楽と2台のホルンのための協奏曲ニ長調
・フルート、弦楽と2台のホルンのための協奏曲ト長調
ギャビー・パス=ファン・リート(フルート)
ヨハネス・メーズス指揮プフォルツハイム南西ドイツ室内管弦楽団(2011録音)
なるほど、1727年生まれで1795年に亡くなったグラーフは、ハイドンとほぼ同世代の人ということになる。残念ながら、彼はハイドンほどに有名でない。とはいえ、その音楽は決して二流でもなければ、駄作というわけでもない。もっと聴かれるべき作曲家だろうと・・・。
ゲーテの詩を想った。
自然は
無感覚なり。
太陽は
善をも悪をも照らし、
月と星は
罪人にもこの上ない善人にも
同様に光り輝く。
~「神性」より抜粋(高橋健二訳「ゲーテ詩集」P122)
昨日のパウル・ユオンといい、CPOは良い仕事をする。
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