ドミニク・ヴェラールのパレストリーナ「宗教合唱作品集」を聴いて思ふ

palestrina_missa_in_duplicibus_vellard190心の平穏を得たいならとりあえずルネサンス音楽に浸るべし。
中でも、ルネサンス後期最大の作曲家といわれるジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナの音楽は、得も言われぬ恍惚感と透明さに満ち、神を賛美する教会音楽でありながら、俗世的な雰囲気を醸す不思議な魅力に溢れるもの数多。
信仰を失った現代人が真っ先に供するべき平常心を喚起するクスリ。
当時も今も、人々の思想のぶつかりは変わりない。そういう概念を超えるものが音楽なのだろうと想像するが、それでも当時のカトリック教会では音楽にまつわるいざこざが絶えなかった。

ポリフォニーによる典礼音楽は典礼文が明瞭に聴き取れなくなるからこれを禁止すると16世紀中葉のトレント公会議にて決定されたことに対して、ポリフォニーと典礼文の両立を示したのがまさにパレストリーナだったという逸話は有名なもの。いくつもの声部によって繰り広げられる音の万華鏡は、何百年の時を経ても人々の心をとらえて離さない。

パレストリーナ:宗教合唱作品集
・8声のための「幸いなるかな天の女王」
・3声から8声のための「聖土曜日の哀歌」
・4声のためのモテット「誇り高い地上の支配者たちは」
・5声のためのミサ・イン・ドゥプリチブス
ドミニク・ヴェラール指揮
コルマール少年合唱団
バーゼル・スコラ・カントゥルム
アンサンブル・ジル・バンショワ(1993録音)

敬虔なるジョヴァンニ・ピエルルイジの魂が見事に反映された音楽たち。「ミサ・イン・ドゥプリチブス」に聴く哀しみはいかばかりか。いや、ここに在るのは人間のもつ一切の感情を超えた清澄な声だ。時折、グレゴリオ聖歌的音響をみせる第2曲「グローリア」の祈りの音調に跪く。そして、第3曲「クレド」導入の男声独唱の意味深さと、続く合唱の応答に聴く恭しさに作曲家の天才を思う。
また、第4曲「サンクトゥス」における、男声合唱を伴奏にした少年合唱の聖なる美しさ。ここはまさにポリフォニーの極致であり、最美の瞬間が頻出する。

妙なるパッション。
450年の時を超え・・・。

 

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1 COMMENT

畑山千恵子

今まで、パレストリーナは後期ルネッサンスを代表する作曲家だとされてきました。今では、世紀末のマニエリスムの作曲家ですね。
パレストリーナの作風は、フランドル楽派のポリフォニーをもととしながらも、人工的なわざとらしさが目に付きます。これには、トレント公会議でポリフォニー音楽が不自然、かつ技巧的になっていたという批判が強かったため、純粋で混じりけのない音楽を作ろうとして、かえって人工的になったことにあります。パレストリーナの音楽は当時のローマ・カトリック教会の御用音楽でもあったわけです。それゆえ、パレストリーナはマニエリスムの作曲家ということになりました。

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